住友不動産(8830)の株価を分析していきます。
住友不動産を5つのポイントで説明
- 売上と利益の主力はオフィスビルを中心とした不動産賃貸事業
- 当期純利益は9期連続最高益を更新
- 有利子負債倍率と自己資本比率は大手3社の中で最下位
- 株価は週足16MAで押さえつけられている
- 配当性向14.8%で配当金は20期連続減配無し
住友不動産の概要
住友不動産は、旧住友本社の不動産部門を継承する会社として設立した、不動産業界3位のディベロッパーです。
三菱地所は丸の内、三井不動産は日本橋の一等地を戦後から保有していました。
しかし、住友不動産は財閥系にしては珍しく一等地を確保していませんでした。
そこから1974年に当時日本一の超高層ビル「新宿住友ビル」を竣工させています。
1980年代に東京に集中投資をする事で売上と利益を伸ばしてきました。
現在では、六本木グランドタワーや新宿グランドタワーを代表に、東京には230棟超の建築中を含めたビルがあります。
これは住友不動産の所有するビルの88%に当たり、東京で一番規模の大きいオフィスビル事業になります。
住宅事業
住友不動産と言えば、住宅に強みを持っています。
2014年から2019年までの6年連続、分譲マンションで初の年間供給戸数日本一達成しました。
しかし2020年に、1位のプレサンスが4,342戸、2位の野村不動産が3,791戸、3位の住友不動産が3,512戸になり、首位の座をプレサンスに奪われました。
住友不動産のマンション販売は、マンション完成前に完売させる事にこだわらずに長期にかけて販売していく戦略のが特徴的で、住宅販売での利益率の高さの秘密です。
1996年に新しい建替事業として開始した「新築そっくりさん」です。
「新築そっくりさん」は、中古住宅をリノベーションして販売する事業です。
今後人口減少に伴って住宅着工件数の減少の傾向が続くことが予想されています。
その中で、中古住宅の需要は確実に高まるので今後も伸びしろがあります。
商業施設事業
オフィスビルの空室リスクに対応するために、商業施設に注力していています。
実際に2つの国家戦略特区事業と大型複合施設に取り組んでいます。
羽田エアポートガーデン
- 160室のラグジュアリーホテル「ヴィラフォンテーヌプレミア羽田空港」
- 1557室のハイグレードホテル「ヴィラフォンテーヌグランド羽田空港」
- 90店舗が入る商業施設「羽田エアポートガーデン」
- 展望天然温泉「竜天空の湯 羽田空港」
- 貸会議室とイベントホール「ベルサール羽田空港」
有明ガーデン
- 200店舗が入る商業施設「ショッピングシティ有明ガーデン」
- 1539戸の新築分譲マンション「シティタワーズベイ東京」
- 749室のハイグレードホテル「ヴィラフォンテーヌグランド東京有明」
- 約8000名収容の多目的ホール「東京ガーデンシアター」
- 約1200名収容の劇場「有明四季劇場」
- 6800㎡の公園「有明ガーデンパーク」
- 280人収容可能なこども園「武蔵野大学付属有明こども園」
- 大規模天然温泉「竜天空の湯 有明ガーデン」
- 8780㎡のスポーツイベントスペース
梅田ガーデン
- 134戸の高級賃貸マンション「ラ・トゥール 大阪梅田ガーデン」
- 584戸の分譲マンション「梅田ガーデンレジデンス」
- 202室のハイグレードホテル「ヴィラフォンテーヌグランド大阪梅田」
主要株主
引用:株探
主要株主には、住友グループ「白水会」の三井住友銀行や住友グループのダイキン工業が名を連ねています。
三井不動産の主要株主に鹿島建設が名を連ねていました。
住友不動産には大成建設、清水建設、大林組、前田建設工業が名を連ねています。
また住友不動産は長谷工や前田建設工業、三井住友建設、奥村組、浅沼組、大豊建設の主要株主になっているにも注目です。
事業セグメント
住友不動産は、主に4つのセグメントから成り立っています。
- 不動産賃貸事業:オフィスビル、マンション、商業施設等の賃貸および管理、ホテル事業、イベントホールや会議室等の賃貸
- 不動産販売事業:マンション、販売用ビル、戸建住宅および宅地の分譲
- 完成工事事業:戸建住宅、マンション、オフィスビル等の建築および改修工事
- 不動産流通事業:不動産売買や賃貸の仲介および住宅等の受託販売
- その他事業:フィットネスクラブ事業、飲食事業等
売上構成比率(2022年3月)
住友不動産の主な収益源は、不動産賃貸事業で都心部のオフィスビルの賃貸事業です。
利益構成比率(2022年3月)
不動産賃貸事業は全体売上高の65%を占めています。
営業利益率は38.4%とかなり利益率が高いです。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:9.7倍
- PBR:0.95倍
不動産業の平均PERが15.2倍、PBRが1.2倍な事を考えると、少し割安と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、業績自体は増収増益でEPSも高くなってきているのに、高値がどんどん切り下がっているのが分かります。
直近の節目は3500円付近にあることが分かります。
今年に入って、現在の株価は週足移動平均線の26MAに押さえつけられています。
週足移動平均線は全て下向きなので下落傾向です。
次の節目は、年初来安値の3057円ですが3100円付近で反発出来るかに注目です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は2020年に1兆0135億円、営業利益の過去最高も2020年の2343億円。
直近の25年間で減収したのは東日本大震災の影響を受けた2012年3月期と新型コロナウイルスの影響を受けた2021年の2回だけです。
営業利益に関しても直近25年で減益したのはリーマンショックの影響を受けた2009年3月期と2010年3月期と新型コロナウイルスの影響を受けた2021年の3回だけです。
しかし、当期純利益やEPSは過去最高益を更新しています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:25.26%
- ROE:9.79%
- ROA:2.76%
- EPS:337.6円
不動産業の平均ROEは8.82%、ROAは2.1%なので経営効率は平均を上回っています。
総合ディベロッパー8社の平均営業利益率は14.6%なので、平均を大きく上回る営業利益率です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:28.1%
- 有利子負債倍率:2.18倍
不動産業の自己資本比率の平均が33.4%、有利子負債倍率の平均が1.34倍に対して平均を下回っている財務状況です。
剰余金は年々増加していますが総資産に対して約20%しかありません。
特に、有利子負債倍率は年々減少していますが、平均の約2倍近くあります。
しかしこの有利子負債倍率の高さには理由があります。
住友不動産は、開発したビルを自社で保有しているからです。
開発のビルを売却しないと資金の回収に時間がかかります。
そのかわりに賃貸事業で中長期的な賃貸収入を得る事を方針としています。
中期経営計画
業績目標
引用:住友不動産
住友不動産は、第六次中期経営計画から4計画連続の最高益の更新を目指しています。
特に重要視しているのが、「3ヵ年累計経常利益7500億円、当期利益5000億円の達成」です。
事業戦略
引用:住友不動産
設備投資
引用:住友不動産
住友不動産は、収益基盤強化のために東京都心の賃貸ビル投資を継続する方針です。
特に第九次中期経営計画では3年間で1兆円の投資を見込んでいます。
投資の内訳
- 再開発を中心に具体化している延床70万坪超の開発計画に7000億円の投資
- 優良物件を必ず抑えるための新規案件投資枠として3000億円の投資
株主還元策
引用:住友不動産
2025年3月までの中期経営計画でも「利益成長に沿った持続的増配」を目指しています。
また、前回の中期経営計画には無かった「年5円増配を継続」の目標を設定しています。
2003年から見ると、経常利益が落ち込んだ2009年から2014年も配当を維持しているのが心強いです。
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:50円(2023年3月期予定)
- 配当利回:1.53%(22年5月20日終値)
- 配当性向:14.8%
配当金は20期連続減配無しで今期は5円の増配予定です。
配当性向も14.8%と増配余力はまだまだあります。
株主優待
残念ながら住友不動産は株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
住友不動産を買うなら、配当目的に向いている銘柄だが高値が切り下がってきているので注意。
住友不動産は、売上高、経常利益、最終益、EPS、営業利益率が優秀な企業です。
チャートは、週足移動平均線は全て下向きなので年初来安値の更新しないかにまずは注目です。
開発したビルを売却せずに賃貸物件として運営するので有利子負債倍率はかなり高いです。
また剰余金も総資産に対して20%以下なの事もすこし残念です。
海外展開は三菱地所や三井不動産のように大きな動きはありません。
この様な点も住友不動産が割安に評価されている点ではないでしょうか。
住友不動産の弱点は、三菱地所や三井不動産と比べて商業施設事業や物流施設が少ないことです。
しかし、オフィスビルの賃貸事業と住宅販売事業に強みを持っています。
実際に事業ポートフォリオのメインは、賃貸事業と販売事業です。
22年3月期は賃貸事業で増収増益、販売事業では高い利益率を維持しながら来期は80%以上が契約済です。
大手不動産会社は、オフィスビルを主軸としています。
今後はオフィスビルの空室リスク対策として、商業施設や海外展開等でカバーしなければなりません。
住友不動産も空室リスク対策に「有明ガーデン」、「羽田エアポートガーデン」、「梅田ガーデン」のような商業施設に注力していく方針です。
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