太平電業(1968)の株価を分析していきます。
太平電業を5つのポイントで説明
- 国内の火力、原子力発電所を中心に発電プラント業界をけん引する企業
- 売上と利益の主力は補修工事部門
- 財務体質は優良だが経営効率は平均を下回る
- 配当は右肩上がりだがDOE2%台が目安
- チャートは20年間で右肩上がりに上昇中
太平電業の概要
太平電業は、国内外で火力・原子力発電所を中心に各種プラントの建設やメンテナンス、マネジメントまで一貫したサポート行う総合プラントエンジニアリング企業です。
主な事業は、国内外の火力・原子力発電所、各種プラント・環境設備等の建設・メンテナンス工事です。
プラントエンジニアリングとは
火力発電所工事は太平電業の原点です。
1947年の創立以来、日本国内の大半の火力発電所の建設を手がけてきました。
日本初の日本原子力発電・東海発電所を手掛けたのも太平電業です。
日本の原子力発電所のパイオニアとして約70%の建設実績を誇っています。
太平電業の強みは、設計・工事計画・プロジェクト管理・工事施工・検査確認まで一貫した対応が出来るという事です。
またプラント建設会社として珍しく、独立系企業という事も大きな特徴です。
火力や原子力発電所の建設やメンテナンスは、国内にある電力プラントの約55%を手掛けています。
またアジアや中東、中南米などの海外でも数多くの事業を展開しています。
近年は、各発電所の再稼働、廃止措置への取り組みにも積極的に取り組んでいます。
建設から補修へ
引用:太平電業
太平電業は、「リスクの高い建設工事から安定的収益が見込める補修工事への展開」を掲げています。
直近10年の実績を見ても、補修工事部門の売上高とセグメント利益は右肩上がりに成長しています。
収益基盤の確保
EPC事業への参入
引用:太平電業
EPC事業とは、設計エンジニアリング(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)を一括したプロジェクトとして設備建設工事を請負う契約方式です。
従来の大型発電プラントプロジェクトでは建設工事のみでした。
小型発電プラントプロジェクトでは、設計・材納を含めた建設の100%に関与することが可能です。
太平電業は、EPC事業に参入する事で収益基盤の確保を図ります。
燃料転換工事の増加
引用:太平電業
アンモニア利用によるCO2削減の技術開発が加速しています。
原子力発電所再稼働・廃止措置工事
太平電業は、脱炭素化社会実現に向けて原子力利用推進は重要な要素と考えています。
また再稼働、廃止措置工事の研究開発を推進していきます。
経団連は2050年カーボンニュートラルに向けた提言、『グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて』を公表しました。
主な内容
- 原子力発電所の積極活用
- 小型モジュール炉(SMR)など次世代原子力発電所の建設
- 産業や民生部門で水素やアンモニアを活用
- カーボンプライシング導入の検討
- 再生可能エネルギーの拡大
事業セグメント
太平電業は、主に2つの事業から成り立っています。
- 建設工事部門:火力、原子力発電設備や製鉄関係、環境保全、化学プラント等の設備据え付けや改造工事等とこれらの設備に付帯する電気計装工事、保温、塗装工事他の施工、および各種プラント設備の解体、廃止措置等
- 補修工事部門:各種プラント設備の定期点検、日常保守、修繕維持等
太平電業のセグメント別売上構成比率(2022年3月)
売上高の主軸は、補修工事部門になり全体の57.7%を占めています。
太平電業は、「リスクの高い建設工事から安定的収益が見込める補修工事への展開」をしています。
この事から、太平電業の主力事業は補修工事部門と言う事が分かります。
太平電業の利益構成比率(2022年3月)
利益の主軸も補修工事部門で全体の86.0%を占めてます。
補修工事部門の利益率は16%、建設工事部門の利益率は3.5%です。
補修工事部門の利益率は、建設工事部門と比べてかなり利益率の高い事業です。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:12.6倍
- PBR:0.85倍
建設業の平均PERが9.8倍、PBRが0.9倍な事を考えると割高と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、直近10年の株価は右肩上がりに上昇してきました。
月足移動平均線も全て右肩上がりなので長期的に上昇傾向です。
週足5年チャートを見ると株価は横ばいに推移していました。
しかし直近の週足移動平均線は、全て上向きになっています。
ローソク足を見ると、22年7月に入って急な上昇をしています。
これは、岸田首相が発表した「22年冬に向けて原発最大9基稼働の方針」に反応したからです。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は2021年に1277億円、営業利益の過去最高は2022年の104億円です。
23年3月期は増収減益を予想しています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:5.85%
- ROE:6.76%
- ROA:4.03%
- EPS:284.1円
上場企業の平均ROE8%、ROA3%なので、経営効率は平均を下回る企業になります。
建設業の平均営業利益が4.4%なので、平均的を少し上回る利益率です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:60.1%
- 有利子負債倍率:0.19倍
100億円以上の建設業の自己資本比率の平均が44%なので、平均を上回る健全な企業です。
有利子倍率は、0.19倍とかなり健全です。
利益剰余金の安心できる目安は、総資産に対して30%以上です。
剰余金は増加傾向で、総資産に対して53.4%もあります。
この事からも太平電業の本業が順調な事が分かります。
中期経営計画
太平電業は、2023年3月期までの中期経営計画を発表しています。
経営数値目標
引用:太平電業
太平電業は、25年3月期の売上高1500億円を目指しています。
また努力目標として売上高1000億円の維持とROE8%以上を目指しています。
投資計画
引用:太平電業
太平電業は、洋上風力発電設備のタワーを効率的に組み立てられる新工法を開発しました。
ジャッキアップシステムを応用し、超大型クレーンを使わずに洋上風力を組み立てる工法です。
メリットは、港湾の拡張や地盤改良も不要なので、建設費の削減が見込めます。
株主還元
太平電業は、23年3月期まで長期的に安定した配当の継続を目指しています。
その中でも、DOEを2%台の維持としています。
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:100円(2023年3月期)
- 配当利回:2.79%(2022年8月26日)
- 配当性向:35.1%
- DOE:2.4%
太平電業の配当金の推移は、2度の減配はしているものの右肩上がり増配しています。
太平電業の22年3月期の配当性向は35.1%です。
この指標と財務状況を見ると増配の余力は十分あると考えられます。
しかし、太平電業は配当性向よりもDOEを重視しています。
23年3月期までDOEは、2%台の維持としています。
株主優待
残念ながら太平電業は、株主優待の設定をしていませんでした。
まとめ
太平電業を買うなら、原発関連銘柄だけでなく発電所の補修工事にも注目したい。
月足10年チャートは右肩上がりに上昇中で、月足移動平均線も全て上向きです。
その中で岸田首相の原発の再稼働を目指す方針が発表されて、原発関連銘柄として注目されました。
この材料で一気に株価は上昇しましたが、3500円付近や押し目で買いを検討出来る銘柄です。
事業内容は、発電施設や各種のプラント設備の建設工事と補修工事です。
特に補修工事部門が主力事業になっていて、売上の約60%を占めています。
また太平電業が国内の約55%の発電施設をメンテナンスしています。
海外での需要も見越して進出していて、実績があるのも好印象です。
太平電業は、日本の電力事情や発電施設のメンテナンスを考えると欠かせない企業です。
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