大林組(1802)の株価分析と特徴をまとめていきます。
大林組を5つのポイントで説明
- 首都圏だけでなく関西でも都市開発に強み
- 海外事業は北米に注力していて現地企業を3社買収
- 売上と利益の主力は国内建築だが不動産事業の利益率の高さに注目
- 工事損失引当金の影響がなくなるのは25年度だが想定より早く回復している
- 週足と月足の移動平均線は全て上向きで35年振りの高値1960円を超えれるかに注目
大林組の概要
大林組は、スーパーゼネコンの一角を担っていて、売上高は2位、営業利益は2位(2024年度3月時点)です。
大林組の特徴は首都圏の都市開発に強みを持っています。
主な手掛けた建築物は東京駅、六本木ヒルズ、東京スカイツリー、虎ノ門ヒルズ等があります。
2010年に本店を東京へ移転しましたが、関西を始めとした西日本でも強い地盤を持っています。
関西では、うめきた再開発、大阪万博、IR事業にも積極的に参画しています。
また大林組は、トヨタ自動車、キヤノン、NEC、三井グループとつながりが深い事でも有名です。
環境事業
新領域事業として再生可能エネルギーや農業ビジネスにも取り組んでいます。
その中でも特に風力発電に注力しています。
大林組は、超大型クレーンを使わずに空中で巨大風車の羽を起こす「ウィンドリフト工法」を開発しています。
大林組の技術力の高さと環境事業の取り組みが分かる様々な初
- 世界一の高さの電波塔を「東京スカイツリー」を単独施工
- 日本初の地熱発電と水素製造実証プラントの建設
- 日本初の高層純木造耐火ビルの建設
- 日本初の水封式LPG地下岩盤貯蔵施設「波方国家石油ガス備蓄基地」
- 世界初の「海水練りコンクリート」の開発
- 世界初の市街地における水素燃料100%のガスタービン発電による熱電供給(川崎重工業と共同)
- 日本初の「WELL認証」を大林組技術研究所が取得
※WELL認証とは、建物内で暮らし、働く居住者の健康・快適性に焦点を当てた世界初の建物・室内環境評価システム
海外事業
また海外事業は、鹿島建設と同様にアメリカや東南アジアに進出しています。
その中でも、特にアメリカやカナダの北米に注力しています。
- 2007年にオフィスビル、商業施設、ホテル、集合住宅等多くのプロジェクトを手掛けるアメリカの建設会社「ウェブコー」を買収
- 2011年に水処理施設などの土木工事を得意とするカナダの建設会社「ケナイダン」を買収
- 2014年に運河、道路、鉄道などのインフラ工事を手掛けるアメリカの建設会社「クレマー」を買収
事業セグメント
大林組は、主に5つのセグメントから成り立っています。
- 国内建築事業:国内での建築工事の受注と施工
- 海外建築事業:北米及び東南アジア等で建築工事の受注と施工
- 国内土木事業:国内での土木工事の受注と施工
- 海外土木事業:北米及び東南アジア等で土木工事の受注と施工
- 不動産事業:大林新星和不動産㈱等が不動産の売買、賃貸並びに宅地開発等の開発事業
- その他事業:PFI事業、再生可能エネルギー事業、金融事業、ゴルフ場事業等
大林組の売上構成比率(2024年3月期)
売上の主力は国内建築事業になっていて全体の54.4%を占めています。
建築事業の中でも、国内の民間建築が全体の56.6%を占めています。
国内工事の用途別内訳では、事務所・庁舎、工場・発電所が受注高の62.5%を占めています。
大林組の利益構成比率(2024年3月期)
利益の主力も国内建築事業になっていて、全体の31.8%を占めています。
国内建築事業の利益率は2.06%となっています。
前期の利益率が3.29%だったので、利益率は悪化しています。
その次に大きいのが国内土木事業で利益率は、6.81%です。
前期に続いて今期も一番利益率が高かったのが、不動産事業で25.46%です。
前期の利益率が31.59%だったので、利益率は悪化しています。
ゼネコンの決算を見る中で重要なのが工事損失引当金です。
この工事損失引当金とは、工事に対して赤字の見通しが立った時、先に当期の損失として計上しておく事です。
つまり、かなり厳しい条件での受注や原材料や人件費の高騰、工事の進捗が悪化している事がわかります。
大林組の工事損失引当金は、スーパーゼネコンの中で2番目に少ない金額です。
しかし、前年より減少しているので受注状況は改善されている事が分かります。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:15.8倍
- PBR:1.19倍
上場しているスーパーゼネコン4社の平均PERが15.3倍、PBRが1.04倍です。
大林組の株価は、上場しているスーパーゼネコン4社の中でも少し割高と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、約35年ぶりに高値を更新しています。
月足移動平均線は全て上向きなので長期的に上昇傾向です。
週足移動平均線も全て上向きなので中期的に上昇傾向です。
当面は、株価が35年振りの高値になっている1960円を上抜け出来るかに注目です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は2024年に2兆3251億円、営業利益の過去最高は2019年の1554億円です。
21年3月期は新型コロナの影響で減収となりましたが、12年3月期から売上高は右肩上がりに成長しています。
25年3月期も売上高は過去最高を更新予想です。
前年度買収したMWH社の連結子会社化で1000億円超の大幅増が大きな要因です。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:3.71%
- ROE:7.55%
- ROA:2.88%
- EPS:121.3円
ROEは10%以上、ROA5%以上あれば経営効率の優秀な企業の目安になります。
スーパーゼネコン5社の平均ROE5.56%、ROA2.17%です。
大林組の経営効率は、平均を上回る経営効率です。
スーパーゼネコン5社の平均営業利益が3.58%です。
大林組の営業利益率は、平均を少し上回る利益率です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:38.2%
- 有利子負債倍率:0.22倍
スーパーゼネコン5社の自己資本比率の平均は37.2%、有利子負債倍率は0.38倍です。
これに対して、大林組の財務状況は平均を少し上回っています。
スーパーゼネコン5社の利益余剰金の平均は26.1%です。
また、総資産に対して30%以上が安心の目安と言われています。
大林組の利益剰余金は、総資産に対して25.6%となっています。
中期経営計画
大林組は2022年から2026年までの中期経営計画を発表しています。
投資計画
引用:大林組
財務指標
引用:大林組
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:80円(2025年3月期)
- 配当利回:4.18%(24年6月28日)
- 配当性向:65.9%
13年連続減配無しで、24年度は80円の配当維持予定です。
23年度から配当の指標をDOE3%から5%程度に引き上げています。
DOE = 年間配当総額(中間+期末) ÷ {(前期末自己資本+当期末自己資本)÷2}
株主優待
残念ながら、大林組は株主優待の設定はありませんでした。
まとめ
大林組を買うなら、上昇傾向なので35年前の高値1960円を超えれるかに注目。
月足移動平均線と週足移動平均線は3本共上向きです。
配当金に関しては、13年間減配していないのは安心材料だと思います。
大林組の25年3月期の見通しは、売上高を過去最高予想です。
23年度では、不採算案件の売上が最盛期を迎えること工事損失引当金を計上していました。
しかし、工事損失引当金を計上した案件の割合は、24年度も多いとの事です。
影響の度合いは、24年度には影響は若干低くなるとの事です。
国内建設事業は底堅い需要が続く中で、業績は想定していたより早く回復局面を迎えています。
影響が無くなる25年度の業績にも注目出来ます。
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