長谷工コーポレーション(1808)の株価分析と特徴をまとめていきます。
長谷工コーポレーションを6つのポイントで説明
- マンション建設首位のゼネコン・ディベロッパーで準大手ゼネコンとしては首位
- 売上と利益の主力は建設関連事業だが建築資材と人件費高騰で利益率が悪化
- 準大手ゼネコン9社の中で経営効率と利益は平均を上回るが財務体質は平均的
- 25年度までの株主還元は総還元性向40%程度だが1株85円の普通配当を下限に設定
- 上昇傾向が終わり1750円付近の節目を守れるかに注目
長谷工の概要
長谷工は、マンション開発を中心としたゼネコン・ディベロッパーで業界トップです。
これまで長谷工コーポレーションは、これまでに65万戸を超える分譲マンションを建設しています。
マンション建設の実績だけでなく、用地調達力もゼネコンの中ではNO1です。
長谷工コーポレーションは通常のゼネコンと違い、用地情報の収集や事業計画の立案などを行っています。
特に強みになっているのが「土地持ち込みによる特命受注」という独自のビジネスモデルです。
これは、自ら仕入れた土地情報を最適な事業計画とともに事業者に提案する方法です。
近年は、ホテルやオフィスビル、物流施設まで様々な建設分野に挑戦しています。
海外事業
引用:長谷工コーポレーション
長谷工コーポレーションは、1973年から米国ハワイ州にて中高層建築、戸建、リゾート開発を手掛けてきました。
1989年に大規模開発の「住宅・商業・リゾート・ゴルフ場」の複合開発を計画しました。
1998年から住宅(戸建・タウンハウス)の分譲を開始しています。
これまでに約4000戸の住宅、18ホールのゴルフ場、約21haのラグーンが完成しています。
現在、アメリカでは13のプロジェクトを推進中です。
また2012年からは将来を見据えた海外事業の足掛かりとしてベトナム・ハノイに進出しています。
特命受注
通常はディベロッパーが用地を見つけて各ゼネコンへ見積もりを出して建設すると言う流れです。
長谷工の場合は、長谷工が用地を見つけて各DVに案件紹介をする特命受注が強みです。
この特命受注は、用地の調達をして事業計画の提案をして建設するだけではありません。
その後の販売や管理や修繕まで一貫して請負っています。
長谷工が請け負ったマンションは、多くのマンション建設で培ったノウハウを反映させています。
このノウハウが「長谷工仕様」となり、利益率の高さを確保しています。
またグループ会社には、建材商社や広告代理店、人材派遣や機材のリースなどの会社があります。
ただ建てるだけでなく、建てる物件に関わりのある事を囲い込みしています。
電脳マンション
2020年11月に「電脳マンション」を開発していて、東京都板橋区の学生マンションで導入済みです。
電脳マンションとは、建物が各種センサーで情報を収集するだけではありません。
気象や室内環境のデータから補修時期を判断して、住民の生活パターンから必要な設備を提案するマンションです。
事業セグメント
長谷工コーポレーションは、4つのセグメントで成り立っています。
- 建設関連セグメント:マンションの工事、施工
- 不動産関連セグメント:新築分譲マンションや賃貸マンションの販売
- サービス関連セグメント:新築分譲マンション販売受託、大規模修繕工事やリフォーム、マンションの運営管理
- 海外関連セグメント:東南アジアではベトナム、インドネシアでの建設事業の新規開拓やアメリカではハワイのオアフ島の戸建分譲やカリフォルニアで不動産開発
長谷工コーポレーションのセグメント別売上構成比(2024年3月期)
長谷工コーポレーションの売上の主力は、建設関連事業になり全体の66.2%を占めています。
長谷工コーポレーションのセグメント別利益構成比(2024年3月期)
長谷工コーポレーションの利益の主力も建設関連事業で全体の60.1%を占めています。
建設関連事業の利益率は、7.45%になっています。
しかし、前期の利益率が8.97%だったので、利益率は悪化しています。
今期、一番利益率が高かったのが不動産関連事業です。
不動産関連事業の利益率は、14.99%になっています。
しかし、前期の利益率が16.3%だったので、利益率も悪化しています。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:9.1倍
- PBR:0.95倍
準大手ゼネコン9社の平均PERが12.4倍、PBRが0.9倍です。
長谷工コーポレーションの株価は、準大手ゼネコン9社の中でも割安と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、株価は20年から右肩上がりに成長しています。
現在の株価は、2018円の高値をつけて下落しています。
この2018円は、2006年以来の高値です。
月足移動平均線は全て上向きなので長期的に上昇傾向です。
週足移動平均線は52MAが上向きですが、13MAと26MAが下向きに転換しています。
また、ローソク足は52MAを割り込んでいるので上昇傾向が終わったと言えます。
直近は、1750円の節目を守れるかに注目です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上の過去最高は2024年に1兆944億円、営業利益の過去最高は2018年の1008億円です。
25年3月期の実績は増収減益を予想しています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:6.95%
- ROE:10.37%
- ROA:3.92%
- EPS:194.3円
ROEは10%以上、ROA5%以上あれば経営効率の優秀な企業の目安になります。
準大手ゼネコン9社の平均ROE7.93%、ROA2.75%です。
長谷工コーポレーションの経営効率は、平均を上回る経営効率です。
準大手ゼネコン9社の平均営業利益が4.73%です。
長谷工コーポレーションの営業利益率は、平均を上回る利益率です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:37.8%
- 有利子負債倍率:0.81倍
準大手ゼネコン9社の自己資本比率の平均は33.9%、有利子負債倍率は0.74倍です。
これに対して、長谷工コーポレーションはほぼ平均的ですが健全な財務基盤です。
準大手ゼネコン9社の利益余剰金の平均は26.2%です。
また、総資産に対して30%以上が安心の目安と言われています。
長谷工コーポレーションの利益剰余金は、総資産に対して34.1%となっています。
しかし利益剰余金は増加傾向で、財務体質も健全なので本業が順調と言えます。
中期経営計画
数値目標
引用:長谷工コーポレーション
25年に連結経常利益を1000億円、30年に1500億円を目指しています。
投資計画
引用:長谷工コーポレーション
海外も含めた不動産開発関連に1800億円を投入しています。
いかに、マンション建設に力を入れているかが分かります。
株主還元方針
引用:長谷工コーポレーション
5期合計の親会社株主に帰属する当期純利益に対して、総還元性向40%程度と設定しています。
また、25年までの配当の下限を80円と設定しています。
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:85円(2025年3月期)
- 配当利回:4.79%(24年5月31日)
- 配当性向:43.7%
長谷工コーポレーションは、連結配当性向40%程度に設定しています。
また、2025年までの中期経営計画で、1株当たりの年間配当を85円の配当を下限としています。
長谷工コーポレーションの財務状況と剰余金比率は健全です。
今後の配当維持や増配余力に関しては問題ありません。
株主優待
長谷工コーポレーションは、100株以上を保有する株主に株主優待を実施しています。
3月
- 長谷工リフォームで100万円以上の室内リフォーム工事代金が3%割引
- 長谷工リアルエステートで不動産売買の仲介手数料(税抜)5%割引
- 自社子会社高齢者住宅、老人ホーム入居一時金1%割引
9月
- 滋賀県上田上産コシヒカリ(5kgまたは10kg)を20%割引販売、購入者の希望で米ぬか
まとめ
長谷工コーポレーションを買うなら、1750円付近の節目を守れるかに注目。
月足と週足の移動平均線を見ると週足13MAと26MA以外は全て上向きです。
しかし、13MAと26MA下向きになっていて、チャートも週足52MAを割り込んでいます。
このことから上昇傾向はいったん終わったと考えられます。
直近の節目は1750円付近になりますが、その次は1680円付近が節目になっています。
長谷工コーポレーションの営業利益率と経営効率は、準大手ゼネコン9社の平均を上回っています。
長谷工コーポレーションの財務体質も、準大手ゼネコン9社の中でほぼ平均的です。
25年度までの株主還元方針は「総還元配当性向40%程度、下限を80円」です。
今後は分譲マンションでもタワーマンションや複合施設などの付加価値のある物件や賃貸マンション、ホテル、物流センターなどの非住宅分野の受注拡大を目指しています。
また、全国で再開発案件が出てきていますが、用地調達能力が十分に発揮できるとは思いません。
しかし、運営管理と言ったノウハウを武器に確実に絡んでくると思います。
また、分譲・賃貸のマンション管理戸数、大規模修繕・リフォーム受注高はこの5年間で着実に伸ばしています。
実際に、日本のマンションは今後建て替えの時期にさしかかっています。
長谷工コーポレーションは、30年以上経った団地型マンションの管理をして建て替え需要に備えています。
中期経営計画の達成は、建築資材や人件費の高騰で困難になっています。
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