大成建設(1801)の株価分析と特徴をまとめていきます。
大成建設を5つのポイントで説明
- スーパーゼネコンの中では唯一の非同族経営
- 世界屈指の技術力で都市開発と大型土木工事に強み
- 自社株買いに積極的で配当も12年連続減配無し
- 配当性向30%・総還元性向100%を上限で自己株式取得を行う方針
- 株価は7年振りの高値付近まで上昇していて月足と週足の移動平均線は全て上向き
大成建設の概要
大成建設は、橋梁などの大型土木建築と都市開発等の再開発案件に強いスーパーゼネコンです。
海外事業にも積極的で、鹿島建設や大林組と違いアジアと中東に進出しています。
拠点を置く14か国の内12か国はアジアなのでいかに注力してるのが分かります。
大型土木建築
大成建設は、これまでに「青函トンネル」、「東京湾アクアライン」、「明石海峡大橋」等を手掛けてきました。
現在はリニア新幹線のトンネル工事の中で最も高度な技術が要求される「南アルプストンネル工事」の施工を請け負っています。
大成建設の土木建築技術を語る上で欠かせないのが、アジアと欧州を結ぶ始めての海底トンネル「ボスポラス海峡横断鉄道トンネル」です。
陸上で作ったトンネルと海底の中でつなぎ合わせるという世界初の試みになる工事でした。
世界中の専門家から「深い海峡と激しい潮の流れがあり、工事は不可能」と言われていました。
しかし大成建設が無事に成功させて「トルコの150年の夢」を叶え、世界でも屈指の開発力と技術力をアピールしています。
再開発事業
再開発事業にも強みを持っていてこれまでに「あべのハルカス」、「東京ミッドタウン」を手掛けていて、現在は「虎ノ門二丁目地区市街地再開発」を手掛けています。
大成建設は、全国の法定開発案件の約20%に関わっているので、大手ゼネコンの中でNO.1の実績を持っています。
また開発事業の売上高でも他のスーパーゼネコンの売上高が500億~600億に対して1000億円を超えているので、他社を圧倒しています。
現在は、日本マイクロソフトと協業して、AIやIoT技術を活用した都市計画に取り組んでいます。
「札幌北1西5計画」の施工不良
23年3月に「札幌北1西5計画」の工事で施工不良が見つかりました。
当初、24年2月の竣工予定でしたが、現時点で26年6月末の竣工を想定しています。
これによる工事原価は約240億円増加しています。
世田谷区の庁舎建て替え工事での工期延長
23年5月に、大成建設は「世田谷区本庁舎等整備工事」で工期延長を申し出ました。
「世田谷区本庁舎等整備工事」で、2023年9月に1期工事の完成を予定していました。
しかし、施工計画の検討や工程管理の問題で最大6か月の延長を申し出ています。
事業セグメント
大成建設は、主に3つのセグメントから成り立っています。
- 建築事業:建築物の建設工事全般に関する事業
- 土木事業:土木工作物の建設工事全般に関する事業
- 開発事業:不動産の売買・賃貸・管理・斡旋等、不動産全般に関する事業
大成建設の売上構成比率(2024年3月)
売上の主力は建築事業になっていて、全体の約62.1%を占めています。
建築事業の中でも、国内の民間建築で全体の56.6%を占めています。
国内工事の用途別内訳では、事務所・庁舎、工場・発電所、教育文化施設が受注高の49.4%を占めています。
大成建設の利益構成比率(2024年3月)
利益の主力は土木事業になっていて、全体の70.9%を占めています。
土木事業の利益率は11.37%となっています。
前期の利益率が10.5%だったので、利益率は改善しています。
前期に続いて今期も一番利益率が高かったのが、開発事業で16.9%です。
前期の利益率が13.5%だったので、利益率は改善されています。
ゼネコンの決算を見る中で重要なのが工事損失引当金です。
この工事損失引当金とは、工事に対して赤字の見通しが立った時、先に当期の損失として計上しておく事です。
つまり、かなり厳しい条件での受注や原材料や人件費の高騰、工事の進捗が悪化している事がわかります。
大成建設の工事損失引当金は、スーパーゼネコンの中で2番目に大きい金額です。
前年より増加しているのでかなり無理をした受注をした事が分かります。
受注時の採算好転の影響が、利益水準に具体化するのは25年度以降を想定しています。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:16.9倍
- PBR:1.18倍
上場しているスーパーゼネコン4社の平均PERが15.3倍、PBRが1.04倍です。
大成建設の株価は、上場しているスーパーゼネコン4社の中でも少し割高と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、約7年ぶりに高値を更新しています。
月足移動平均線は全て上向きなので長期的に上昇傾向です。
週足移動平均線も全て上向きなので中期的に上昇傾向です。
当面は、株価が7年振りの高値になっている6620円を上抜け出来るかに注目です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は1993年に2兆3514億円、経常利益の過去最高は2018年の1818億円です。
24年度の業績は増収増益予想していますが、利益面ではまだまだ回復途中です。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:4.37%
- ROE:6.99%
- ROA:2.52%
- EPS:353.1円
ROEは10%以上、ROA5%以上あれば経営効率の優秀な企業の目安になります。
スーパーゼネコン5社の平均ROE5.56%、ROA2.17%です。
大成建設の経営効率は、平均を上回る経営効率です。
スーパーゼネコン5社の平均営業利益が3.58%です。
大成建設の営業利益率は、平均を上回る利益率です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:36.0%
- 有利子負債倍率:0.41倍
スーパーゼネコン5社の自己資本比率の平均は37.2%、有利子負債倍率は0.38倍です。
これに対して、大成建設の財務状況は平均を少し下回っています。
スーパーゼネコン5社の利益余剰金の平均は26.1%です。
また、総資産に対して30%以上が安心の目安と言われています。
大成建設の利益剰余金は、総資産に対して21.6%となっています。
24年3月期の決算で996億円の工事損失引当を計上しています。
これは清水建設に続き、スーパーゼネコンの中で2番目に大きな金額です。
この事から24年3月期は、本業で苦戦していた事が分かります。
中期経営計画
経営数値目標
引用:大成建設
26年度の数値目標には、未決定の政策保有株式の売却とM&Aは織り込んでいません。
しかし、政策保有株式については26年度末までに連結純資産額の20%未満に縮減することを目標としています。
目標通りに進捗すれがROE10%程度達成出来ると見込んでいます。
また、政策保有株式の売却で得た資金は配分する方針です。
投資計画
引用:大成建設
投資事例
引用:大成建設
株主還元策
引用:大成建設
中期経営計画では、配当性向を30%程度を維持するとしています。
また、「成長投資」や「株主配当」後、余剰資金が乗じた場合、「総還元性向100%」を上限に自己株式を取得するとしています。
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:130円(2024年3月期)
- 配当利回:2.18%(23年6月28日)
- 配当性向:36.8%
12年連続減配無しで、25年3月期も130円の配当維持予定です。
しかし中期経営計画にある30%程度に対して36.8%なので目安を上回っています。
株主優待
引用:みんかぶ
まとめ
大成建設を買うなら、上昇傾向なので7年前の高値6620円を超えれるかに注目。
チャートを見ると月足移動平均線と週足移動平均線は3本共上向きです。
大成建設は、経営効率、財務、積極的株主還元、利益率の高さなど魅力が多いです。
配当金に関しては、12年間減配していないのは安心材料だと思います。
国内事業は、人件費の高騰や人材不足などの課題があります。
23年度から引き続き24年度も、原価高騰の影響で利益面は厳しい状況が続く見込みです。
しかし、25年度以降は、受注時採算好転の影響が利益水準に具体化する事を想定しています。
25年度には、利益水準が8~9%になる事が可能と大成建設は考えています。
25年度に利益面が回復することを考えると、まだまだ上昇の余地はある銘柄です。
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