タカラレーベン(8897)の株価を分析していきます。
タカラレーベンを5つのポイントで説明
- 郊外の分譲を主力にするマンションディベロッパー
- 売上と利益の主力は不動産販売事業で今後はリニューアル再販事業に注力
- 経営効率は平均的だが利益率と財務体質は平均以下
- 利回4.5%の高配当株だが株価290円をしっかり固めてから買いを検討したい
- 24年3月期は過去最高の売上高と利益を更新予想
タカラレーベンの概要
タカラレーベンは、首都圏を地盤に分譲マンションの販売を主力にする不動産ディベロッパーです。
1972年の創業当時は、宝工務店と言う名前で、戸建分譲事業を中心に行っていました。
1994年に自社分譲マンション「レーベンハイム」シリーズを発表して、分譲マンション事業を始めます。
この新築分譲マンション事業は、他社に比べて珍しく郊外や10万人都市を中心に開発しています。
さらに仕入方針として、駅から徒歩10分圏内で3000~3500万円で販売できる事を条件にしています。
今後市場の拡大が予想される中古マンション市場に対しては、リニューアル再販事業で対応しています。
リニューアル再販事業は、中古マンションを仕入れて退去後にリフォームを行い、自社で再販しています。
この事業は、今後分譲マンション販売事業に次ぐ柱になるとタカラレーベンは考えています。
タカラレーベンは、マンションディベロッパーとしては珍しく「エネルギー事業」を持っています。
これは、2013年にメガソーラー事業に参入したからです。
このエネルギー事業では、再生可能エネルギーを活用して発電した電力を電力会社に販売しています。
供給エリアとターゲットの絞り込み
供給エリアの差別化
引用:タカラレーベン
現在のマンション供給エリアは34都道府県に進出しています。
タカラレーベンの地盤は首都圏になりますが、新築分譲マンションの供給エリアには特徴があります。
供給エリアは、「首都圏郊外及び中部、近畿」と「地方中心市街地」になっています。
10万人都市の280か所に対して供給済の都市は30%なので、今後の潜在的供給可能エリア多数としています。
この事から分かるように、都市部の郊外をターゲットにしている事が分かります。
これは、競争の激しい首都圏を避けるだけではありません。
投資目的の購入ではなく、「無理なく安心して住んでもらえる住宅供給」をコンセプトにしているからです。
ターゲット層の絞り込み
またエリアごとにターゲットを絞っているのも特徴です。
都心部では、ファミリー層やシングル層だけでなく、DINKS層を新たにターゲットにしています。
地方中心市街地はアクティブシニア層をターゲットにしています。
こうした取り組みの結果、全国マンション供給ランキングでは、7年連続トップ10にランクインしています。
エネルギー事業
エネルギー事業は、再生可能エネルギーを活用した発電事業で、発電施設の開発も行っています。
また売電収入だけでなく「タカラレーベン・インフラ投資法人」へ発電施設の売却を行っています。
現在は、太陽光発電を中心としていますが、今後は風力やバイオマス発電の導入を検討しています。
初の海外分譲マンション
引用:タカラレーベン
タカラレーベンは、2018年にベトナムのハノイに進出しました。
そして、タカラレーベンとフジタの共同事業で「THE MINATO RESIDENCE」プロジェクトを発表しています。
内容は、ベトナム第3の人口の都市「ハイフォン」での分譲マンションの開発です。
株主比率
引用:タカラレーベン
タカラレーベンの株主比率で、一番高いのが個人株主で全体の約55%を占めます。
その内の約39%は、創業者で筆頭株主の村山会長が保有しています。
村山会長が保有している株数を引いても、個人投資家が一番多いです。
配当利回りの高さもありタカラレーベンが、いかに個人投資家から人気なのかが分かります。
事業セグメント
タカラレーベンは、4つのセグメントから成り立っています。
- 不動産販売事業:主に新築分譲マンション、収益不動産の売却、戸建分譲、リニューアルマンション等
- 不動産賃貸事業:事務所及び居住用マンション等の賃貸事業
- 不動産管理事業:マンションの管理等
- 発電事業:再生可能エネルギーを活用した発電事業
- その他事業:投資運用事業、建設の請負事業、修繕工事事業等
タカラレーベンの売上構成比率(2021年3月期)
タカラレーベンの売上の主力は、不動産販売事業になり全体の79%を占めています。
売上構成比率は大きくありませんが、2番目に大きいセグメントは発電事業になっています。
タカラレーベンの利益構成比率(2021年3月期)
利益の主力も不動産販売事業で、全体80.7%を占めています。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足3年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:7.0倍
- PBR:0.64倍
不動産業の平均PERが15.2倍、PBRが1.2倍なので、割安と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見てみると、280円付近で反発しています。
月足移動平均線は、全て下向きなので長期的には下落傾向です。
週足を見てみても290円付近で底値を付けて反発しています。
週足移動平均線は、13MAと26MAは下向きになっているので下落傾向です。
出来高も減少してきているので、290円付近の節目を割り込む事を頭に入れておきたいです。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上の過去最高は2020年に1684億円、営業利益の過去最高も2020年の125億円です。
21年3月期は、新型コロナの影響で減収減益になりました。
しかし22年3月期の売上高は回復予想ですが、営業利益面で大幅な減益になっています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:4.98%
- ROE:9.07%
- ROA:2.07%
- EPS:44.1円
不動産業の平均ROEは8.82%、ROAは2.1%なので、経営効率は平均的な企業です。
マンションディベロッパー10社の平均営業利益率は9.1%なので、利益率は平均の半分以下です。
また新型コロナの影響で不動産販売事業の売上低下に伴い利益も減少しまいました。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:22.8%
- 有利子負債倍率:2.90倍
自己資本比率は、不動産業の平均が33.4%なので大幅に下回っています。
有利子負債倍率は、不動産業の平均が1.34倍なので大幅に下回っています。
剰余金は総資産に対して20.4%しかありませんが、毎年しっかり積みあがっています。
中期経営計画
タカラレーベンは、25年3月期までの中期経営計画を発表しています。
業績数値目標
引用:タカラレーベン
売上目標の計画を見ると、24年3月期に過去最高の売上と利益を更新予想です。
内訳をみても、主力の新築分譲マンション事業が大幅に回復する見通しです。
経営数値目標
引用:タカラレーベン
タカラレーベンは、引き続き不動産販売事業に注力していくことが分かります。
不動産販売事業の比率を68%から約80%まで拡大する見込みです。
しかし、その他の事業のウェイトには大きく変化はありません。
むしろエネルギー事業は減少傾向なので、他の事業の成長はまだ先になりそうです。
自己資本比率は、直近3年で約26%で推移してきました。
しかし、前回の中期経営計画でも30%を掲げていて未達の結果でした。
ROEは、前回の中期経営計画では、毎期15%を掲げていました。
結果は、直近3年で下落傾向で未達になっています。
これは、資産評価損が原因で資産評価損を除くと3年平均で達成しているとの事です。
セグメント別戦略
新築分譲マンション事業
引用:タカラレーベン
4年後の25年3月期には、売上戸数2,500戸をめざしています。
また駅前再開発や老朽化マンションの再生プロジェクト等の再開発事業へ積極的に参入します。
リニューアル再販事業
引用:タカラレーベン
人口減少に伴い、分譲マンションの中古市場はさらに拡大していくと思います。
タカラレーベンは、リニューアル再販事業を2番目の柱にするとしています。
4年後には、保有戸数800~1000戸を目指して、売上高も約2倍へ成長させる計画です。
流動化事業
引用:タカラレーベン
流動化事業では、毎年300~500億円ペースで投資の継続を計画しています。
その中でも特にマンションやオフィスなどの賃貸レジデンス開発に注力します。
エネルギー事業
引用:タカラレーベン
タカラレーベンの行う再生可能エネルギー事業は、太陽光発電になります。
今後は、太陽光発電以外の自然エネルギーを活用した再生可能エネルギーの拡大を目指しています。
その中でタカラレーベンは、電力の相対取引に積極的に参加する計画です。
引用:タカラレーベン
不動産管理事業
引用:タカラレーベン
タカラレーベンは、不動産管理事業がストック事業の柱としています。
現在、約66000戸の管理戸数を4年後に80,000戸超えを目指しています。
その他事業
戸建事業
引用:タカラレーベン
エリアマーケティングを強化する事で、仕入エリアの厳選や仕入・供給体制の再構築を行います。
海外事業
現在、ベトナムのハノイに駐在員事務所を構えています。
引き続きベトナムの主要都市のハノイとハイフォンを中心に海外展開を継続します。
今後は不動産販売事業だけでなく、新築分譲マンション事業、不動産管理事業、リニューアル再販事業等の展開を目指しています。
その他事業
AMフィー、修繕工事の拡大、自社ホテルブランドの確立を計画しています。
AMフィーとは、アセットマネジメントフィーの事です。
再生可能エネルギー発電設備等を中心としたインフラ資産や、オフィスビル・賃貸住宅・商業施設等を主な投資対象とした私募ファンドの運用になります。
株主還元
引用:タカラレーベン
株主優待を廃止する代わりに配当性向を30~35%を目途にしています。
直近の21年3月期は、3円の減配を発表しています。
今後は、23年3月期までは配当維持を予想しています。
しかし業績が大幅に回復する24年3月期には、配当も大幅に増配を計画しています。
配当金と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:14円(2022年3月期)
- 配当利回:4.52%(2021年10月29日)
- 配当性向:31.7%
8年連続減配をせずに配当金を増やしてきましたが、21年3月期は減配を発表しました。
またそれに伴いタカラレーベンは、21年7月に株主優待を廃止しました。
その代わりに、配当性向目標を30~35%へ5%引き上げています。
現在の配当利回は、4.5%を超えているのでかなりの高配当銘柄になります。
配当性向が31%なので増配余力があると思いますが、自己資本比率や有利子負債倍率が心配です。
株主優待
残念ながらタカラレーベンは、株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
タカラレーベンを買うなら、290円付近でしっかり反発したのを確認してから買いたい。
21年3月期は減収減益でしたが、22年3月期は増収減益予想で、減益幅はー26.8%の予想です。
中期経営計画を見ると、24年3月期に過去最高の売上と利益を更新予想です。
今から入らずにしばらく様子を見てもいいと思います。
経営効率の指標は平均的ですが、利益面や財務体質は平均面を下回っています。
中期経営計画の今後の事業ポートフォリオで、不動産販売事業だけが成長しています。
ここは、新築分譲マンションとリニューアル再販の拡大だと思います。
しかし他のセグメントの構成比率にあまり成長がありません。
エネルギー事業に関しては、減少しています。
不動産管理や不動産賃貸事業の成長にも期待したいです。
チャートは、月足と週足の移動平均線は下向きなので下落傾向です。
しかし、直近3年間での底値圏は290円付近で、新型コロナショックの時でも301円でした。
また上値は、400円を3回つけて下落しています。
400円まで上昇すれば売却を検討するタイミングです。
配当に関しては、配当利回りが4.5%以上なので高配当になります。
ここが個人投資家の比率の多い理由ではないでしょうか。
中期経営計画でも、23年3月期まで配当維持、24年3月期から増配予定です。
5年間保有を考えると高配当銘柄としてもいいかもしれません。
22年3月期の配当性向は、31.2%ですが、中期経営計画の30~35%の範囲に収まっています。
不動産業は、有利子負債倍率が比較的に高い業界です。
タカラレーベンの有利子負債倍率と自己資本比率は平均より低い数値です。
また剰余金も積みあがっていますが、まだまだ20%台と低いです。
高配当の魅力は大きいですが注意も必要です。