東亜建設工業(1885)の株価を分析していきます。
東亜建設工業を5つのポイントで説明
- マリコン業界2位の海洋土木に特化した中堅ゼネコン
- 週足と月足移動平均線は上向きだが現在の株価は21年3月から調整中
- 19年8月から株価は上昇しているが出来高は減少している
- 配当は直近10年で2回減配
- 冷凍冷蔵技術の差別化と洋上風力や医療施設などに注力
東亜建設工業の概要
東亜建設工業は、海洋土木を中心とした土木事業に特化した中堅ゼネコンです。
マリコンとしては、首位の五洋建設に大きく売上高で離されていますが、業界2位の大手企業です。
メモ
マリコンとは、ゼネコンの中で、特に海洋関係の土木工事・港湾施設・建築の建設工事を中心とする建設業者の事です。
工事内容は、埋立・浚渫、護岸・防波堤、海底工事、橋梁基礎工事、海底トンネル工事などの海洋土木工事全般および港湾施設の建築工事を請け負います。
2002年には安藤建設(現:安藤ハザマ)と業務提携を結んでいます。
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東亜建設工業は、五洋建設と比べても土木事業の割合が大きく、海洋建設に特化しています。
実際に、マリコンならではの港湾に関する耐震・免震・津波対策・液状化技術を多く持っています。
建築技術の方では、冷凍冷蔵倉庫の耐震や耐火技術に強みをもっていています。
物流施設を稼働させながらリノベーションができるのも大きなメリットです。
また今後の成長分野として洋上風力発電・再開発事業・医療分野に注力していく計画を持っています。
海外事業は東南アジアを中心に中東・アフリカでの土木工事が中心になっています。
港湾土木工事だけでなく、橋梁・治水・上下水道分野を推進することで建築分野の強化をしています。
主要株主には旧村上ファンド系の野村絢、シティインデックスイレブンスが入っています。
洋上風力発電事業と基地港整備事業
引用:東亜建設工業
東亜建設工業はEPC事業者として、2024年度までに総発電設備容量600MW以上に参画することを目指しています。
冷凍冷蔵倉庫分野での技術の差別化
引用:東亜建設工業
東亜建設工業は、耐震補強工法「THJ®耐震補強工法」を開発しています。
稼働中の冷蔵倉庫内の温度をマイナスに保った状態(-25℃まで対応)でも、常温での施工と同等の耐震性能が確保できます。
また冷凍冷蔵倉庫向けの防熱耐火パネルで、国土交通大臣の認定を取得しています。
引用:東亜建設工業
マリコン独自の耐震技術
東亜建設工業は護岸や岸壁の耐震に関する技術力の高さにも強みを持っています。
地震が発生すると、岸壁、護岸などの港湾施設には大きな土圧が発生します。
大きな土圧が発生すると、施設の倒壊や過大な変位といった被害をもたらすことがあります。
このような施設の背面側地盤の改良することで、土圧低減対策、液状化対策が可能になります。
プラグマジック工法
引用:東亜建設工業
プラグマジック工法とは、軟弱な浚渫土を改良し、埋立地の地盤材料などに再利用する技術です。
デコム工法
デコム工法とは、軟弱土を原位置で固化材と一緒に攪拌混合・固化させて、軟弱な地盤を堅固な地盤に改良する技術です。
事業セグメント
東亜建設工業は、主に4つのセグメントから成り立っています。
- 国内土木事業:国内土木工事、設計受託等に関する事業
- 国内建築事業:国内建築工事、設計受託等に関する事業
- 海外事業:海外工事全般に関する事業
- その他事業:不動産事業、建設機械の製造・販売及び修理事業、PFI事業等
東亜建設工業の売上構成比率(2021年3月)
売上高の主軸は国内土木事業になり、全体の43%を占めています。
もう少し深く見ると、海外事業の約99%は土木事業になっています。
つまり東亜建設工業の土木事業だけで、売上高の約65%を占めています。
受注高についても2487億円に対して、土木工事の港湾・空港が1326億円でした。
つまり受注高の内、約53%が海洋土木工事になっています。
東亜建設工業は、海洋土木に特化している事が分かります。
東亜建設工業の利益構成比率(2021年3月)
利益の主軸も国内土木事業になり、全体の約56%を占めています。
21年3月期の土木事業の利益率は約7.4%、建築事業の利益率は約6.2%になっています。
21年3月期の海外事業は、売上高の減少や一部の不採算工事の損益悪化でマイナスになっています。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足3年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:7.7倍
- PBR:0.62倍
建設業の平均PERが9.8倍、PBRが0.9倍な事を考えると割安と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、近年の底値圏は1200円付近になっています。
月足移動平均線は60MAが少し上向き始めているので、3本共上向きになっています。
週足移動平均線は13MAは横ばいですが、26MAと52MAが上向いています。
21年3月からローソク足は横ばいなので、現在株価は調整中です。
ただし、20年から株価が上昇しているのにも関わらず出来高が減少しているので注意が必要です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は1997年に3513億円、営業利益の過去最高は1996年の1373億円です。
21年3月期の決算は減収増益の結果になっていますが、EPSは大きく改善されています。
22年3月期は増収減益予想になっています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:4.04%
- ROE:7.95%
- ROA:2.94%
- EPS:317.8円
中堅ゼネコン8社の平均営業利益率は4.9%なので、利益率は少し低いです。
上場企業の平均ROE8%、ROA3%なので、経営効率は平均的な企業になります。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:36.9%
- 有利子負債倍率:0.38倍
100億円以上の建設業の自己資本比率の平均が44%です。
なので、東亜建設工業の自己資本比率は平均より少し低いですが改善傾向にあります。
また、直近3年の有利子倍率も減少傾向で、1倍以下の0.38倍です。
余剰金は増加傾向にありますが、総資産に対して18.4%しかありません。
21年3月期の営業CFが大幅に減少しているので、フリーCFも大きく減少しています。
投資CFは直近3年で見ると増加傾向なので、今後の成長のために投資を行っている事が分かります。
財務CF・剰余金・自己資本比率・有利子負債倍率の改善がみられます。
しかし営業CFが減少している事を見ると、まだ本業はまだ持ち直していない状態である事が分かります。
中期経営計画
東亜建設工業は、2022年に向けた中期経営計画を策定しています。
長期ビジョン TOA2030
引用:東亜建設工業
事業戦略
引用:東亜建設工業
洋上風力の受注強化
引用:東亜建設工業
現在、大林組と共同で大型洋上風力発電所の建設を目的としたSEP(自己昇降式作業台船)を建造中です。
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業績数値目標
引用:東亜建設工業
財務数値目標
引用:東亜建設工業
2022年までの株主還元は、単体の配当性向を20%~30%を目途にしています。
投資計画
引用:東亜建設工業
2030年の長期ビジョンの達成に向けて、今回の中期経営計画は事業構造の変革に注力しています。
事業領域の拡大と経営基盤の強化のために、3年間で100 億円規模の投資を計画しています。
進捗状況ですが、2020年はSEPの建設などに70億円の投資を実施しました。
2021年以降は、将来の研究開発・人財・デジタル化への投資を予定しています。
引用:東亜建設工業
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:80円(2022年3月期)
- 配当利回:3.25%(21年7月20日終値)
- 配当性向:25.1%
配当は、18年3月期に復配してから4年連続減配をしていません。
配当性向は25.1%なので、中期経営計画の20%~30%の範囲に収まっています。
ただし、直近10年で2回も減配しているので注意は必要です。
株主優待
残念ながら東亜建設工業は、株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
東亜建設工業を買うなら、材料が出てから購入したい。
チャートを見る限り、現在の株価は上昇後の調整中ですが出来高は年々減少しています。
週足移動平均線の26MAがローソク足に近づいているので、方向性が決まるのも近いと考えられます。
22年3月期の決算の予想は増収減益になっているので、決算状況を確認していく必要があります。
主要株主に旧村上ファンド系がいるので、将来的に株主還元に積極的になるかもしれません。
まずはそこに向けて、財務状況の改善や営業CFの安定を目指していると思います。
事業内容や今後の成長については、大林組と共同で洋上風力発電への参画しています。
また港湾土木に強みを持っているマリコンならではの防災技術にも注目です。
海外事業は、東南アジア・中東・アフリカなどの人口増加が見込まれる地域に進出しています。
しかし海外事業の利益率はまだ厳しい状況なので、今後の課題になると思います。
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toua (1)
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