東亜建設工業(1885)の株価分析と特徴をまとめていきます。
東亜建設工業を5つのポイントで説明
- マリコン業界2位の海洋土木に特化した中堅ゼネコン
- 週足と月足移動平均線は全て上向きで直近10年間の高値を更新
- 配当は5年連続減配無しで配当性向30%以上に引き上げ
- 旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが大株主
- 冷凍冷蔵技術の差別化と洋上風力や医療施設などに注力
東亜建設工業の概要
東亜建設工業は、海洋土木を中心とした土木事業に特化した中堅ゼネコンです。
マリコンとしては、首位の五洋建設に大きく売上高で離されていますが、業界2位の大手企業です。
メモ
マリコンとは、ゼネコンの中で、特に海洋関係の土木工事・港湾施設・建築の建設工事を中心とする建設業者の事です。
工事内容は、埋立・浚渫、護岸・防波堤、海底工事、橋梁基礎工事、海底トンネル工事などの海洋土木工事全般および港湾施設の建築工事を請け負います。
2002年には安藤建設(現:安藤ハザマ)と業務提携を結んでいます。
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東亜建設工業は、五洋建設と比べても土木事業の割合が大きく、海洋建設に特化しています。
実際に、マリコンならではの港湾に関する耐震・免震・津波対策・液状化技術を多く持っています。
建築技術の方では、冷凍冷蔵倉庫の耐震や耐火技術に強みをもっていています。
物流施設を稼働させながらリノベーションができるのも大きなメリットです。
また今後の成長分野として洋上風力発電・再開発事業・医療分野に注力していく計画を持っています。
海外事業は東南アジアを中心に中東・アフリカでの土木工事が中心になっています。
港湾土木工事だけでなく、橋梁・治水・上下水道分野を推進することで建築分野の強化をしています。
主要株主には旧村上ファンド系の野村絢、シティインデックスイレブンスが入っています。
洋上風力発電所の建設を目的としたSEP「柏鶴」が完成
引用:東亜建設工業
2023年、大林組と共同で建造を進めていたSEP(自己昇降式作業台船)が完成しました。
このSEP船は、大型洋上風力発電所の建設を目的としています。
近年の風車の大型化を受けて、クレーンのつり上げ能力を当初1000トンから1250トンに増やしています。
船体設計と建造を行ったのは、ジャパンマリンユナイテッドです。
ジャパンマリンユナイテッドは、国内のSEP起重機船建造で最も実績のある造船所です。
清水建設のSEP起重機船「BLUE WIND」の建造もジャパンマリンユナイテッドが手がています。
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冷凍冷蔵倉庫分野での技術の差別化
引用:東亜建設工業
東亜建設工業は、耐震補強工法「THJ®耐震補強工法」を開発しています。
稼働中の冷蔵倉庫内の温度をマイナスに保った状態(-25℃まで対応)でも、常温での施工と同等の耐震性能が確保できます。
引用:東亜建設工業
また冷凍冷蔵倉庫向けの防熱耐火パネルで、国土交通大臣の認定を取得しています。
マリコン独自の耐震技術
東亜建設工業は護岸や岸壁の耐震に関する技術力の高さにも強みを持っています。
地震が発生すると、岸壁、護岸などの港湾施設には大きな土圧が発生します。
大きな土圧が発生すると、施設の倒壊や過大な変位といった被害をもたらすことがあります。
このような施設の背面側地盤の改良することで、土圧低減対策、液状化対策が可能になります。
プラグマジック工法
引用:東亜建設工業
プラグマジック工法とは、軟弱な浚渫土を改良し、埋立地の地盤材料などに再利用する技術です。
デコム工法
デコム工法とは、軟弱土を原位置で固化材と一緒に攪拌混合・固化させて、軟弱な地盤を堅固な地盤に改良する技術です。
事業セグメント
東亜建設工業は、主に4つのセグメントから成り立っています。
- 国内土木事業:国内土木工事、設計受託等に関する事業
- 国内建築事業:国内建築工事、設計受託等に関する事業
- 海外事業:海外工事全般に関する事業
- その他事業:不動産事業、建設機械の製造・販売及び修理事業、PFI事業等
東亜建設工業の売上構成比率(2023年3月)
売上高の主軸は国内土木事業になり全体の45.5%、を占めています。
その次に国内建築事業、海外事業になります。
東亜建設工業の利益構成比率(2023年3月)
利益の主軸も国内土木事業になっていて、全体の約66.3%を占めています。
23年3月期の国内土木事業の利益率は6.8%、海外事業の利益率は4.8%になっています。
23年3月期の国内建築事業は、売上高の減少や一部工事での着工遅れ、原材料の高騰で3億3700万の赤字になっています。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:10.8倍
- PBR:0.8倍
建設業の平均PERが14.4倍、PBRが0.9倍な事を考えると割安と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、近年の底値圏は1200円付近になっています。
月足移動平均線は60MAが少し上向き始めているので、3本共上向きになっています。
週足5年チャートを見ると週足移動平均線は全て上向きです。
株価は、8月14日のサプライズ決算で直近10年間で最高値の3550円をつけました。
この上昇は、日足チャートで窓を開けて上昇しました。
まずは、3200円付近の窓埋めに注意が必要です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は1997年に3513億円、営業利益の過去最高は1996年の1373億円です。
23年3月期の決算は、減収減益の結果になりました。
しかし、24年3月期は大幅な増収増益予想になっています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:3.83%
- ROE:7.44%
- ROA:2.90%
- EPS:314.1円
中堅ゼネコン8社の平均営業利益率は3.18%なので、利益は平均的です。
中堅ゼネコン8社の平均ROEは6.51%、平均ROAは2.83%なので、経営効率も平均的な企業です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:39.1%
- 有利子負債倍率:0.46倍
中堅ゼネコン8社の自己資本比率の平均が43.4%、有利子負債倍率の平均は0.27倍です。
東亜建設工業の自己資本比率は、平均より少し低いです。
東亜建設工業の有利子負債倍率は、平均を下回ります。
利益剰余金の安心できる目安は、総資産に対して30%以上です。
剰余金は毎年増えていますが、総資産に対して20.5%です。
中期経営計画
東亜建設工業は、2025年に向けた中期経営計画を策定しています。
長期ビジョン TOA2030
引用:東亜建設工業
事業戦略
引用:東亜建設工業
財務数値目標
引用:東亜建設工業
資本政策
東亜建設工業は、2025年度までROE8%以上を維持し、資本生産性の向上を目指しています。
連結配当性向の目標は、30%以上として配当を行う事を掲げています。
また、1株当たりの価値、PBRが向上した場合は、24年度と25年度の配当性向を「40%以上」に変更します。
事業戦略
既存事業の高度化
引用:東亜建設工業
新規事業を含め新たなビジネスモデルに果敢に挑戦
引用:東亜建設工業
投資計画
引用:東亜建設工業
2030年の長期ビジョンの達成に向けて、今回の中期経営計画は事業構造の変革に注力しています。
事業領域の拡大とさらなる成長のために、3年間で200 億円規模の投資を計画しています。
成長戦略につなげる技術開発
引用:東亜建設工業
東亜建設工業は、技術研究開発センターⅡ期の整備完成でイノベーションの加速を計画しています。
洋上風力の推進
引用:東亜建設工業
洋上風力では、SEP船を活かした多角的な営業展開と浮体式洋上風力発電の研究開発に取り組みます。
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:100円(2024年3月期)
- 配当利回:2.95%(23年8月18日終値)
- 配当性向:31.8%
配当は、18年3月期に復配してから5年連続減配をしていません。
配当性向は31.8%なので、中期経営計画の30%以上の範囲に収まっています。
中期経営計画でも充実した株主還元を掲げています。
財務体質も中堅ゼネコンの中では平均的ですが、健全な企業です。
引き続き、増配や配当の維持を期待したいです。
株主優待
残念ながら東亜建設工業は、株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
東亜建設工業を買うなら、3200円の窓埋めに注意して購入したい。
株価は、直近10年間の高値を更新していて、月足と週足移動平均線は全て上向きです。
24年3月期の決算は、大幅な増収増益の予想なので、織り込まれる可能性に注意です。
また、主要株主に旧村上ファンド系がいるので、株主還元に積極的になっています。
引き続き、財務状況の改善や営業CFの安定を目指していると思います。
事業内容や今後の成長については、大林組と共同で洋上風力発電への参画しています。
また港湾土木に強みを持っているマリコンならではの防災技術にも注目です。
海外事業は、東南アジア・中東・アフリカなどの人口増加が見込まれる地域に進出しています。
しかし海外事業の利益率はまだ厳しい状況なので、今後の課題になると思います。
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