東洋エンジニアリング(6330)の株価を分析していきます。
東洋エンジニアリングを5つのポイントで説明
- 国内第3位のエンジニアリング御三家でアンモニアや尿素に強み
- 売上高の海外比率は約57%で今後は肥料プラント、インフラ、アンモニアに注力
- 経営再建中で経営効率や利益率は平均を下回る
- 23年3月期は増収減益予想で使用している為替レートは1ドル=137円
- 600円割れで購入を検討してもいいがまだリスクの懸念は残る
東洋エンジニアリングの概要
東洋エンジニアリングは、国内第3位の総合プラントエンジニアリング企業です。
プラントエンジニアリングとは
東洋エンジニアリングは、現在の三井化学の工事部門が独立してできた企業です。
現在でも三井物産が筆頭株主になっているので、三井系の企業になります。
東洋エンジニアリングは、日揮HD、千代田化工建設と一緒に「エンジニアリング御三家」と呼ばれています。
日揮HDや千代田化工建設と違いLNGプラントを手掛けた実績はありません。
しかし祖業のアンモニア・尿素を中心に化学肥料分野で独自技術を磨いてきました。
現在では、石油化学、石油・ガス処理、資源開発、発電などの様々な領域へと事業分野を拡大しています。
注目されるアンモニア
引用:東洋エンジニアリング
東洋エンジニアリングは、燃料アンモニアの販売や電力事業の展開で安定的な成長を図ろうとしています。
特に注目しているのが、日本向けの燃料アンモニア製造設備とバイオジェット燃料などの再生可能代替航空燃料(SAF)です。
2050年までに燃料アンモニアプラントのEPCの需要は累計で1.5兆円、SAFのEPCも3.6兆円の規模になる事を見込んでいます。
ライセンス世界シェア
引用:東洋エンジニアリング
東洋エンジニアリングは、創業当初から尿素合成技術を自社ライセンスとして持っています。
1960年代にはアンモニアライセンサー「KBR社」、エチレンライセンサー「Lummus社」とも技術提携を結んできました。
ポイント
1960年代からアンモニア製造プラントを手掛けていて、累計80件以上と業界トップの実績です。
永松社長も「(アンモニアプラントの建設において)世界シェア上位にいると自負している」と強調しています。
経営危機と再建
2016年にアメリカで信越化学工業の米国子会社シンテックのエチレンプラント建設が始まりました。
エチレンプラントの建設自体は、東洋エンジニアリングの得意分野です。
しかし複雑な地盤での工期延長、人件費の高騰、ハリケーンや豪雨などの被災に遭います。
これらの原因で2019年度にアメリカでエチレンプラントの建設で大幅な赤字を計上しました。
さらに2018年3月期には、自己資本比率が10%を切る水準にまで落ち込みます。
プラント会社は、自己資本比率が20%を切る水準だと案件の入札に支障が出ると言われています。
2019年に投資ファンドのインテグラル等が約150億円分の株式を割り当てて、倒産を回避しています。
さらに日鉄エンジニアリングとの包括的な提携契約を結びました。
また今までの無理なプロジェクトの受注戦略、理論通りにいかないコスト削減戦略してきました。
これらを見直す事で再建が進むと考えられます。
事業セグメント
東洋エンジニアリングは、EPC事業の単一事業から成り立っています。
- EPC事業:プラントの設計・調達・工事業務
東洋エンジニアリングのプラント別売上構成比率(2022年3月)
引用:東洋エンジニアリング
売上高の主軸は、発電・交通システム等になり全体の36%を占めています。
また石油・ガスが19%、化学・肥料が19%、石油化学が18%を占めています。
この事からも売上のバランスの取れている企業と言うことが分かります。
また近年、東洋エンジニアリングが注力にしているインフラ関係も伸びてきているのが分かります。
東洋エンジニアリングのエリア別売上構成比率(2022年3月)
引用:東洋エンジニアリング
東洋エンジニアリングの国内外の売上高構成比率は、海外が57%、日本国内が43%です。
新型コロナ前の売上高の海外比率は70%以上もありました。
エリア別の売上構成比を見ると西南アジア・中東・アフリカが約23%と主力のエリアになっています。
その次に東南アジア・韓国が14%、中国が10%の順番です。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:24.4倍
- PBR:0.73倍
建設業の平均PERが9.8倍、PBRが0.9倍な事を考えるとかなり割高と判断されています。
チャート分析
東洋エンジニアリングの株価は、直近10年で右肩下がりに下落しています。
しかし直近2年で見ると底打ちしています。
月足10年チャートを見ると、12MAと24MAが60MAより下なのでまだ弱い相場です。
週足5年チャートを見ると700円付近が直近の上値抵抗線になっているのが分かります。
また600円付近が下値支持線になっている事も分かります。
この600円を割り込むと50円刻みに節目になっています。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は2017年に4319億円、営業利益の過去最高は2009年の151億円です。
23年3月期は増収減益を予想しています。
この業績予想では為替レートを1ドル=137円を使用しています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:0.95%
- ROE:3.00%
- ROA:0.61%
- EPS:25.6円
上場企業の平均ROE8%、ROA3%なので、経営効率は平均を下回る企業になります。
建設業の平均営業利益が4.4%なので、平均を大きく下回る利益率です。
利益率や経営効率は、日揮HDと比べると少し見劣りしてしまいます。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:18.4%
- 有利子負債倍率:0.81倍
100億円以上の建設業の自己資本比率の平均が44%なので、平均を大きく下回る企業です。
東洋エンジニアリングの自己資本比率は、平均を以下ですが少しずつ改善されています。
しかし入札に支障をきたす20%以下なのでまだまだ注意は必要です。
有利子倍率は、0.81倍なので健全と言えます。
利益剰余金の安心できる目安は、総資産対して30%以上です。
剰余金は増加傾向ですが、総資産に対して6.73%しかありません。
事業規模に対してのリスクが大きい業界なので、財務体質には注意が必要です。
中期経営計画
東洋エンジニアリングは、2021年から2025年の5年間に対して中期経営計画を発表しています。
KGIとKPI
引用:東洋エンジニアリング
2023~25年度までの平均で当期純利益50億円以上を安定的に稼ぐことを目指しています。
EPC強靭化戦略
引用:東洋エンジニアリング
新規事業領域の取組
引用:東洋エンジニアリング
新規事業の取り組みでは、2030年を目途に順次収益化を目指しています。
戦略投資
引用:東洋エンジニアリング
2025年までの5年間で、ICT/DXoT投資を5年間で総額280億円を投資します。
また技術・事業開拓投資では、5年間で総額80億円を投資します。
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:0円(2023年3月期)
- 配当利回:ー%(2022年9月16日)
- 配当性向:ー%
東洋エンジニアリングは、経営再建中と言う事もあって配当金を出していません。
株主優待
残念ながら東洋エンジニアリングは、株主優待の設定をしていませんでした。
まとめ
東洋エンジニアリングを買うなら、600円割れで購入したい。
東洋エンジニアリングは、国内3位の総合プラントエンジニアリング企業です。
特に石油関連や化学肥料などの分野では、国内外でもトップクラスの実績をもっています。
今後は肥料プラント、インフラ、アンモニアに注力しています。
また受注工事の種類はバランスがとれていて、22年度の売上高構成比は海外が約58%です。
コロナ前は海外比率が70%以上だったので、円安のメリット大きく受ける企業です。
現在は、投資ファンドに支援を受けて経営再生中ですが、財務体質は少しずつ改善されてきています。
チャートを見ると過去10年で株価は右肩下がりに下落しています。
現在の株価は底打ちをしましたが、600円から700円付近を横ばいに推移しています。
東洋エンジニアリングは、世界の食料問題やカーボンニュートラルを考えると欠かせない企業です。
しかしプラント業界は、ハイリスクハイリターンな業界と言うことも忘れてはいけません。
今後は、注力しているインフラ、燃料アンモニア、生可能代替航空燃料(SAF)に注目です。
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