松井建設(1801)の株価を分析していきます。
松井建設を5つのポイントで説明
- 社寺建築に高い技術力と実績がある「寺社仏閣の松井」
- 主力事業は建築工事で売上の9割以上を占める
- 経営効率や利益率は平均を下回るが財務は優秀
- 月足10年チャートで見ても株価は右肩下がり
- 株価は720円付近から780円付近までのボックス相場
松井建設の概要
松井建設は、寺社仏閣、城郭、文化財等の伝統技術を継承する建築工事を主体のゼネコンです。
このことから「寺社仏閣の松井」と言われています。
創業は1586年で、越中守山城(富山県高岡市)の建築工事に従事したのが始まりです。
現在の社歴は430年以上になり、日本国内証券取引所上場企業の中で最古の上場企業です。
430年間の間に伏見城の建築工事、築地本願寺の復興工事、桜田門の改修工事を手掛けてきました。
明治以降では、2000件を超える全国各地の社寺仏閣と文化財の建築や改修を行っています。
経営姿勢
松井建設は創業来の「質素・堅実・地道」を社風にしています。
これらの「身の丈経営」と言う、堅実経営の姿勢も松井建設の特徴です。
財務状況を見ても無借金経営、自己資本比率は約60%、剰余金比率約50%とかなり健全です。
現在は、安定した経営基盤を確保の為に一般建築9、社寺建築1の割合に比重を置いています。
松井建設の制震・免震技術
木造多重塔の制震構造
引用:松井建設
特徴
- 塔の頂部内部の最適な部分にダンパーを設置することにより、揺れに対する心柱頂部の変位を約30%低減(※)させることができます。
- 使用ダンパーは、軽量化が図られ設置が容易です。
- 塔身内部に設置するため、外部からは見えず、大事な外観を損ないません。
- 騒音・粉塵発生の低減
- 豊富な設計バリエーション
(※)実績工事の設計時地震応答解析による。
木造多重塔の制振構造は、地震や台風等の揺れを塔身と心柱の間でエネルギーを吸収します。
これにより、相輪や心柱の損傷を防ぎます。
MST免震システム
引用:松井建設
MST免震システムは、「すべり支承+復元ゴム」方式を採用しています。
これにより社寺建築物や3~4階建までの低層建物に適しています。
従来の免震工法と比較すると低コストで高性能な点が特長です。
伝統木造建物の水平構面制振補強方法
引用:松井建設
特徴
- 壁を増設することなく、耐震性能を向上できる
- ダンパーは人目に触れない場所に設置するため、外観を損なわない
- ダンパーは軽量化が図られ設置が容易
- 豊富な設計バリエーション
伝統的な木造建物を地震や台風などから守る方法です。
既存建物に設置する制振ダンパー装置が揺れのエネルギーを吸収します。
伝統木造建物の柱脚部制振補強方法
引用:松井建設
特徴
- 人目に触れない床下の柱脚部で補強が行える
- 耐力壁を増設することなく耐震性能を向上させることができる
- 柱脚部を制振装置で覆うため、柱の横ずれを防止することができる
- 制振部材は、粘弾性ダンパーを使用することで、メンテナンスが不要で大地震後でも交換が不要
- 柱脚部が固定されていない伝統木造建物の柱脚部に制振装置を取り付けます。
このことにより、耐震性能を向上させることができます。
事業セグメント
松井建設は、2つのセグメントから成り立っています。
- 建設事業:建築・土木その他建設工事全般に関する事業
- 不動産事業等:不動産の売買・賃貸その他不動産全般に関する事業
松井建設の売上構成比率(2021年3月)
売上高の主軸は、建設事業になり全体の95.8%を占めています。
松井建設は、建築工事主体のゼネコンになります。
主力の建設事業の中でも建築工事の比率は、95%以上を超えています。
松井建設の利益構成比率(2021年3月)
利益の主軸も建設事業になり、全体の83.4%を占めています。
21年3月期の建設事業の利益率は3.5%、不動産事業等の利益率が16.3%です。
販売管理費及び一般管理費は、総利益からら25%以下が優良企業と言われています。
松井建設の販売管理費及び一般管理費は、総利益から58.2%もあります。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:13.9倍
- PBR:0.55倍
建設業の平均PERが9.8倍、PBRが0.9倍な事を考えると少し割安と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、株価は16年7月から下落しています。
月足移動平均線は、12MAと24MAが上向いてきましたが、60MAより下にいます。
週足5年チャートを見ると、直近2年の株価は横ばいです。
また720円付近が底値の節目になっていて、780円付近が上値の節目になっています。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は2020年の944億円、営業利益の過去最高は2016年の61億円です。
22年3月期は、減収減益予想をしています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:2.62%
- ROE:3.94%
- ROA:2.63%
- EPS:55.7円
上場企業の平均ROE8%、ROA3%なので、経営効率は平均を大幅下回る企業になります。
大手ゼネコン23社の平均営業利益が6.7%なので、平均を大幅に下回る利益率になっています。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:61.5%
- 有利子負債倍率:ー
100億円以上の建設業の自己資本比率の平均が44%なので、平均を大きく上回る企業です。
直近3年の自己資本比率は、50%以上で推移しています。
有利子倍率は無借金経営なのでありません。
剰余金は増加傾向で、総資産に対して50.7%もあります。
21年3月期の営業CFはプラスで、投資CFと財務CFはマイナスになっています。
中期経営計画
松井建設は、2019年4月から2022年3月」までの経営三ヵ年計画を掲げています。
引用:松井建設
具体的な売上や利益目標、配当や財務政策についての記載はありませんでした。
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:20円(2022年3月期)
- 配当利回:2.59%(2022年1月1日)
- 配当性向:35.9%
松井建設は、2年連続減配予想です。
売上高も2年連続減少していて、EPSは3年連続減少予想です。
松井建設の配当金は、中間配当は普通配当8円のみです。
期末配当は、普通配当8円と特別配当を合わせた形になります。
この普通配当に関しては、減配されていません。
財務体質も優良なので増配余力は問題ありません。
しかし業績悪化で配当性向が上昇傾向にあります。
直近5年で見ると配当金はEPSではなく、売上高に連動しています。
株主優待
残念ながら松井建設は、株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
松井建設を買うなら、720円付近で反発を確認して買いたい。
しかし長期保有ではなく、2週間単位の短期での保有が前提になります。
松井建設は、創業当初の歴史から伝統木造建造物に強みを持っています。
しかし現在の受注内容の9割が一般建築なので、業績は景気に大きく左右されます。
経営指標を見ると営業利益率、ROE、ROAは、ゼネコンの中でも平均を大きく下回っています。
財務体質は、高い自己資本比率と無借金経営の有利子負債倍率です。
剰余金は総資産に対して50.7%なので、本業が順調な事を表しています。
このように財務状況は健全ですが、配当性向は上昇傾向にあります。
22年3月期の配当性向は35%以上の予想で、2期連続減配予定です。
22年3月期の利益とEPSは約25%の減少予想です。
購入するなら景気回復時の業績が底打ちしたことを確認したいです。