西松建設(1820)の株価を分析していきます。
西松建設を5つのポイントで説明
- 大型の官庁土木の中でもトンネルやダムに強み
- 売上と利益の主軸は建築事業だが、建築・土木ともに利益率が低い
- 23年まで株主還元を連結配当性向継続的に70%以上
- 主要株主の中にモノ言う株主「シティインデックスイレブンス」
- 3300円付近で固めるか3580円を抜けるか様子を見たい
西松建設の概要
西松建設は、ダムやトンネルなどの大型の官庁土木を得意とする準大手ゼネコンです。
トンネル工事の技術と実績が豊富にあり、トンネル工事の受注額のシェアは上位です。
代表的なトンネル工事の施工実績には、「北越急行 鍋立山トンネル 中工区」があります。
この工事は、約22年の工期がかかった屈指の難工事で、「掘り進めても戻される」最難関工区を施工しています。
建築事業は、超高層マンションとビルなどの非住宅にも注力しています。
建築工事の中で、工場・発電所・倉庫・物流施設・住宅が、売上の約60%を占めています。
海外事業は、強みを持っている香港、タイ、シンガポールを中心に東南アジアに進出しています。
その中でも、タイとベトナムの建築工事を新規市場として注力しています。
またラオスでは、日系ゼネコン初となる合弁会社を設立しています。
現場力
引用:西松建設
西松建設の強みは、「現場力」です。
西松建設はこの「現場力」で様々な難関工事を突破してきました。
西松建設の現場力で突破してきた難工事
- 全国渋滞ワースト1を解消「東名高速道路大和トンネル拡幅工事、大和地区付加車線工事」
- 国内初の木構造とRC造の一体施工「平取町国民健康保険病院改築工事」
- ラオス初「パクセージャパン日系中小企業専用経済特区(工業団地)」
- 1.5か月の工期で熊本地震の復興に貢献「鶴屋百貨店復旧工事」
- 3D盛土情報管理システムを活用「新名神高速道路 猪名川 東・中道路」
- 約180万年前から80万年前の地層と対話「金沢東部環状道路 御所トンネル(Ⅱ期線)工事」
- 唯一無二の実現「HULIC & New SHIBUYA」
- シンガポールの次世代電力供給「トランスミッションケーブルトンネル東西線第3工区工事」
- 福井県民の取水制限を解消「河内川ダム建設工事」
- 軟弱地盤でタワーキャンパス建設「学校法人常翔学園梅田キャンパス(仮称)新築工事」
- 復興の為に2年で防災集団移転用地を完成「仙台市荒井西土地区画整理事業」
戸田建設と業務提携
1999年には、同じ準大手ゼネコンの戸田建設と業務提携を結んでいます。
技術研究や開発、資材や施設の相互利用で間接経費の削減を目的にしています。
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事業セグメント
西松建設は、主に3つのセグメントから成り立っています。
- 土木事業:土木工事の請負及びこれに付帯する事業
- 建築事業:建築工事の請負及びこれに付帯する事業
- 開発・不動産事業:不動産の賃貸・販売、資産管理などの事業
西松建設の売上構成比率(2021年3月)
西松建設は土木工事に強みをもっていますが、売上の主軸は建築事業です。
西松建設の利益構成比率(2021年3月)
西松建設の利益の主軸も建築事業で、全体の約44%を占めています。
しかし、建築事業の利益率は約4.6%、土木事業の利益率は約6.6%なので利益率は低いです。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:12.9倍
- PBR:0.9倍
建設業の平均PERが9.8倍、PBRが0.9倍な事を考えると、割高と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、現在の株価は歴史的に高い事が分かります。
5月11日の決算発表で、配当を大きく増配する事を受けて大幅に上昇しました。
しかし、月足、週足の移動平均線は全て上向きなので、長期的には上昇傾向にあります。
まずは17年11月の高値3580円を目指すか、調整して3300円付近を固めれるかに注目です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は1997年に7279億円、営業利益の過去最高は1996年の315億円です。
21年3月の最終益が減少している原因の一つに、完成工事補償引当金90億円を計上しています。
19年3月に引渡済のマンションで施工不備が判明した事で、瑕疵補修費用が発生することが確実となったからです。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:6.23%
- ROE:6.94%
- ROA:3.03%
- EPS:261.4円
上場ゼネコン55社の平均営業利益率は7.3%なので利益率はやや低いです。
上場企業の平均ROE8%、ROA3%なので、ほぼ平均的な経営効率の企業です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:43.6%
- 有利子負債倍率:0.56倍
100億円以上の建設業の自己資本比率の平均が44%なので、平均的な企業です。
有利子倍率は、1倍以下の0.50倍なので問題ありません。
剰余金は増加傾向で、総資産に対して31.9%なので安心です。
中期経営計画
業績目標
引用:西松建設
投資計画
引用:西松建設
投資計画では、開発・不動産事業に530億円を投入する予定です。
他のゼネコン同様に利益率の高い収益源の確保に開発・不動産事業に注力している事が分かります。
資本戦略
引用:西松建設
財務体質は、自己資本比率を引き下げて、有利子負債倍率を上げてますが問題のない範囲です。
株主還元に関しては、連結配当性向を継続的に70%まで大幅に引き上げています。
また3年で200億円以上の自社株買いを発表しています。
連結配当性向70%はかなり高い印象ですが、アクティビスト(モノ言う株主)の影響があります。
旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが約22.84%保有してます。
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:185円(2022年3月期)
- 配当利回:5.47%(21年5月21日終値)
- 配当性向:70.7%
22年度3月期の期末配当金は185円を予定しています。
財務体質が健全ですが、配当性向が70.2%という数字だけ見ると、今後の増配の余力は厳しいです。
しかし23年までの中期経営計画には、連結配当性向が70%以上としています。
業績次第では減配の可能性がありますが、モノ言う株主の影響で株主還元を重視しています。
株主優待
残念ながら西松建設は株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
西松建設を買うなら、3300円付近で反発してからか3600円を抜けてから買いたい。
「防災・減災」、「国土強靭化」は国策なので、土木工事分野の恩恵を受けれる企業になると思います。
主要株主の中に旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが約22.84%保有しています。
この影響で資本効率と株主還元に積極的になっています。
実際に配当だけでなく、自社株買いも発表しています。
また連結配当性向が70%以上になっていますが、余剰金を含めた財務体質は優良なので心配はないです。
チャートを見ると月足、週足の移動平均線は全て上向きなので長期的に上昇傾向にあります。
ここから17年11月の高値3580円を目指すか、調整して3300円付近を固めれるかに注目です。