大本組(1793)の株価分析と特徴をまとめていきます。
大本組を5つのポイントで説明
- 建築・土木・海洋土木をカバーする中堅ゼネコンで首都圏の売上が全体の6割
- 売上の主力は建築事業だが利益の主力は土木事業
- 財務体質はかなり健全だが経営効率は中堅マリコンの平均を大きく下回る
- 配当金は20年間減配の実績が無く減配しない強い意志を感じる
- 株価は約27年ぶりの高値圏で月足と週足の移動平均線は全て上向き
大本組の概要
大本組は、建築を中心に土木・海洋土木を含めた全ての分野をカバーする中堅ゼネコンです。
大本組の本社は岡山県ですが、首都圏での受注が全体の6割を占めています。
創業以来、土木事業を主体として新幹線や本四連絡架橋等の国内の大きなプロジェクトに参入してきました。
しかし近年では、民間主体の建築事業へ注力しています。
建築事業では、これまで商業施設、物流施設センター、オフィスビル、工場の実績があります。
その他にも病院・医療センター、ホテル、大学、研究所、警察署、高層マンションの実績もあります。
また主要顧客には、イオンモールがあるのでショッピングモールなどの大規模商業施設を手掛けています。
土木事業ではダム・河川、道路、鉄道、港湾・空港、宅地・公園、エネルギー・上下水道まで幅広いインフラのニーズに応えることができます。
特にニューマチックケーソン工法での無人化施工等に大きな強みを持っています。
また東日本大震災の時には、対策本部を設置して復興へ尽力した企業でもあります。
近年では、神戸と岡山の社有地を利用した太陽光発電事業も開始しています。
大本組の技術力
大本組は、新しい技術研究開発も行って先端技術を導入してきました。
現在でも豊富な経営資源が土台となって、技術力を高めているのが強みです。
大本組の代表的な技術力
- 免震制震構法:免震・制震・スマート制震構法
- CFT構法
- ニューマチックケーソン工法:ROVOケーソン工法・Super-ROVOケーソン工法・減圧・呼吸システム
- ICT施工技術:3Dバックホウマシンガイダンス・ICTブルドーザ・ICT転圧ローラ・自動追尾式TS
- 港湾・空港施工技術:ケーソン据付支援システム・遠隔操作ケーソン注水管理システム
- 環境・その他技術:貝殻利用技術 JFシェルナース・FONドリル工法
事業セグメント
大本組は、主に2つのセグメントから成り立っています。
- 建築事業:建築工事全般
- 土木事業:土木工事全般
大本組の売上構成比率(2023年3月)
売上高の主軸は建築事業になり、全体の61.3%を占めています。
また官民比率を見ると71.4%:28.6%になっています。
大本組の利益構成比率(2023年3月)
利益の主軸は土木事業になり、全体の64.6%を占めています。
22年度の建設事業の利益率は3.15%、土木事業業の利益率は9.1%になっています。
ゼネコンの決算を見る中で、重要なのが工事損失引当金です。
この工事損失引当金とは、工事に対して赤字の見通しが立った時、先に当期の損失として計上しておく事です。
つまり、かなり厳しい条件での受注や原材料や人件費の高騰、工事の進捗が悪化している事がわかります。
大本組の22年度の工事損失引当金は、約16.42億円でした。
この金額は、前年と比べると約8倍の金額です。
また直近5年間で見てもかなり大きな金額となっています。
このことから22年度の大本組の受注状況は、かなり厳しかった事が分かります。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:37.0倍
- PBR:0.56倍
建設業の平均PERが17.1倍、PBRが1.1倍な事を考えるとかなり割高と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、約27年ぶりの高値圏まで株価は上昇しています。
月足移動平均線は全て上向きなので長期的に上昇傾向です。
週足移動平均線も全て上向きなので中期的に上昇傾向です。
直近3年間のチャートを見ると、週足52MA付近まで下落した時は買い場になっています。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は1997年に1656億円、営業利益の過去最高も1997年の102億円です。
23年3月期の決算は増収減益の結果でしたが、24年3月期の決算は減収増益の予想です。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:1.71%
- ROE:1.52%
- ROA:1.04%
- EPS:70円
中堅マリコン3社の平均営業利益率は3.9%です。
大本組の利益率は、中堅マリコン3社の平均を下回っています。
中堅マリコン3社の平均ROEは5.71%、平均ROAは2.91%です。
大本組の経営効率は、中堅マリコン3社の平均を大きく下回っています。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:63.6%
- 有利子負債倍率:0.17倍
中堅マリコン3社の自己資本比率の平均が55.5%、有利子負債倍率の平均は0.2倍です。
大本組の自己資本比率は、中堅マリコン3社の平均を大きく上回っています。
大本組の有利子負債倍率は、中堅マリコン3社の平均とほぼ同じです。
元々大本組は、自己資本比率が60%以上で無借金経営で有名な企業です。
利益剰余金の安心できる目安は、総資産に対して30%以上です。
剰余金は毎年ほぼ横ばいですが、総資産に対して53.9%となっています。
大本組の財務体質は、かなり健全な財務体質です。
中期経営計画
大本組は、21年度から23年度までの3年間で中期経営計画を策定しています。
数値ビジョン
引用:大本組
配当政策と目標経営指標
引用:大本組
建築事業戦略
数値目標
引用:大本組
大本組は、最終年度の受注高450億円以上、売上高450億円以上、工事利益率11%以上を目標にしています。
基本方針
主力分野における取組強化
- 大型商業施設、物流施設における競争力強化
- 豊富な実績とノウハウを活かした技術力、提案力の向上
都市型建築の事業領域拡大
- オフィスビル、再開発など都市型建築への取り組みの計画的推進
- 各種ランドマークの建設実績に基づく技術力、提案力の向上と活用
民間建築事業への継続的注力
- 信用と確かな技術力、健全な財務力などの優位性を活かした営業展開
- BIMなどのICT技術を活用した生産性向上による競争力強化
土木事業戦略
引用:大本組
大本組は、最終年度の受注高350億円以上、売上高350億円以上、工事利益率10%以上を目標にしています。
基本方針
公共事業への持続的取り組み強化
- 技術提案力の向上などによる総合評価落札方式の受注力向上
- 施工上のリスク分析の徹底と将来の事業構成を意識した人材育成
独自技術の深化と生産性向上技術への取り組み
- ニューマチックケーソン工法など独自技術の深化による市場競争力強化
- i-Construction、AI等の生産性向上技術の計画的推進
顧客ニーズに沿った事業分野への注力
- 民間土木事業への取り組み強化
- 防災、減災、老朽化対策等などの分野における技術力、営業力の向上
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:65円(2024年3月期)
- 配当利回:2.52%(24年4月5日終値)
- 配当性向:92.8%
大本組は、配当性向の目標を30%以上としています。
22年度の配当性向は161.4%、23年度の配当性向は92.5%となっています。
しかし、大本組は減配せずに配当の維持や増配を決定しています。
過去の配当金の実績を見てみると配当金を20年間減配していません。
健全な財務体質を武器に、減配しないという強い意思が伝わってきます。
株主優待
残念ながら大本組は、株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
大本組を買うなら、週足移動平均線の52MAに接近したところで買いたい。
大本組の売上の6割は首都圏になっている事と主要得意先にイオンモールがあります。
売上の主力事業は建築事業で売上全体の61.3%を占めています。
しかし、利益の主力は土木事業で利益全体の64.6%を占めています。
ゼネコンの中でも単独で建築・土木・海洋土木の全てに対応できるゼネコンは珍しい存在です。
その他にも神戸や岡山の社有地で太陽光発電事業も実施しています。
株価は、27年ぶりの高値圏付近まで上昇しています。
月足と週足の移動平均線は全て上向きなので、長期的にも上昇傾向と言えます。
大本組の経営効率は、中堅マリコン3社の中でも平均を下回る経営効率です。
しかし財務体質は、中堅マリコン3社、主要ゼネコンの中で見てもかなり健全な財務体質です。
大本組は、健全な財務体質を武器に技術力を高めてきました。
また配当金を20年間減配していない事と厳しい業績の中でも増配を決定しています。
建築・土木・海洋土木の全ての分野をカバーする大本組ですが、近年は太陽光発電事業を開始しています。
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