若築建設(1888)の株価分析と特徴をまとめていきます。
若築建設を5つのポイントで説明
- マリコンのパイオニアで高い浚渫技術を持つ中堅マリコン
- 売上の主力は建設事業で海上土木、陸上土木、建築のバランスがとれている
- 財務体質は健全で経営効率は中堅マリコンの平均を上回る
- 洋上風力発電やバイオマス発電等の再生可能エネルギー事業に注力
- 株価は約18年ぶりの高値圏だが4000円から4400円の窓を埋めれるかに注目
若築建設の概要
若築建設は、高い浚渫技術を持つマリコンのパイオイニア企業です。
メモ
マリコンとは、ゼネコンの中で、特に海洋関係の土木工事・港湾施設・建築の建設工事を中心とする建設業者の事です。
工事内容は、埋立・浚渫、護岸・防波堤、海底工事、橋梁基礎工事、海底トンネル工事などの海洋土木工事全般および港湾施設の建築工事を請け負います。
若築建設は、1890年に福岡県北九州市の若松港の整備のために設立された企業です。
建設業界の中でも1番の歴史があり、上場する企業の中でも17番目に歴史のある企業です。
海上土木事業のパイオニアとして港湾、空港建設等の大プロジェクトに携わってきました。
今では、海上土木を中心に陸上土木、建築、海外事業の4事業を展開しています。
若築建設は、浚渫や埋め立て、防波堤や海底トンネルなど港湾事業に強いだけではありません。
河川や湖沼の浄化などの環境関連技術にも注力しています。
また再生可能エネルギー事業では風力発電所の建設工事も行っています。
全国第3位の風車を設置している秋田県では、秋田県の約3分の1を若築建設が関わっています。
その他にもメガソーラーパネルやバイオマス発電所、小水力発電所の建設工事も行っています。
高い浚渫技術
若築建設は、浚渫の分野で高い技術を持っているのが特徴です。
メモ
浚渫とは、港湾・河川・運河などの底面をさらって土砂などを取り去る土木工事のことです。
グラブ浚渫船兼全旋回式起重機船「若鷲丸」
引用:若築建設
「若鷲丸」は、130kW以上の原動機にIMO認証機採用することで窒素酸化物(NOx)の排出を低減しました。
施工面ではグラブバケット角度制御装置、法面対応グラブバケットを搭載しています。
浚渫グラブバケット角度制御装置は、グラブ浚渫の画期的なバケット制御システムです。
スイング掘削時に旋回角度に応じて向きの変わるグラブバケットの方向を、常に最適な方向に向ける装置です。
従来のものに比べて旋回に応じてグラブバケットの角度を最適に制御することで重複割合を小さくし浚渫効率を向上させることができます。
重複部分のムラや浚渫効率の低下を防ぐだけでなく、余掘量の低減と作業効率の向上を実現しています。
浚渫土処理技術
カルシア改質土
引用:若築建設
若築建設は、浚渫土処理技術が高いことでも有名です。
建設工事によって発生した土は、土質性状に応じて適切な方法で利用する必要があります。
若築建設はカルシア改質土というものを生成する技術を持っています。
カルシア改質土とは、軟弱な浚渫土にカルシア改質材と呼ばれるものを混合したものです。
これにより強度の発現、水中投入時の濁り抑制、リンや硫化物の溶出を抑制することが出来ます。
事業セグメント
若築建設は、主に3つのセグメントから成り立っています。
- 建設事業:主に国内において海上土木工事、陸上土木工事、建築工事
- 不動産事業:国内において不動産の販売及び賃貸事業
- その他事業:船舶監理業務
若築建設の売上構成比率(2023年3月)
売上高の主軸は建設事業になり、全体の98.4%を占めています。
建設事業の内訳を見ると建築比率は約28.5%、土木事業の比率は71.4%になっています。
その中で、海上比率が約35.7%、陸上比率が約35.6%になっています。
また国内の官民比率を見ると68.5%:31.5%になっています。
このことから若築建設の建設事業比率は、バランスの取れた事業と言えます。
若築建設の利益構成比率(2023年3月)
利益の主軸も建設事業になり、全体の96.7%を占めています。
22年度の建設事業の利益率は9.7%、不動産事業の利益率は32.08%になっています。
ゼネコンの決算を見る中で、重要なのが工事損失引当金です。
この工事損失引当金とは、工事に対して赤字の見通しが立った時、先に当期の損失として計上しておく事です。
つまり、かなり厳しい条件での受注や原材料や人件費の高騰、工事の進捗が悪化している事がわかります。
若築建設の22年度の工事損失引当金は、約4.21億円でした。
この金額は、前年と比べると約8倍の金額です。
また直近5年間で見てもかなり大きな金額となっています。
このことから22年度の若築建設の受注状況は、かなり厳しかった事が分かります。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:11.0倍
- PBR:0.66倍
建設業の平均PERが17.1倍、PBRが1.1倍な事を考えるとかなり割安と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、約18年ぶりの高値圏まで株価は上昇しています。
月足移動平均線は13MAは横ばいですが、24MAと60MAが上向きです。
週足移動平均線は52MAは横ばいですが、13MAと26MAが追い抜こうとしています。
この事から中長期的に見て、上昇傾向と言えます。
当面は、4000から4400円までの窓を埋めれるかに注目です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は1997年に1873億円、営業利益の過去最高は2022年の68億円です。
23年3月期の決算は減収減益の結果でしたが、24年3月期の決算は増収増益の予想です。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:6.67%
- ROE:10.55%
- ROA:4.73%
- EPS:360.6円
中堅マリコン3社の平均営業利益率は3.9%です。
若築建設の利益率は、中堅マリコン3社の平均を上回る企業です。
中堅マリコン3社の平均ROEは5.71%、平均ROAは2.91%です。
若築建設の経営効率は、中堅マリコン3社の平均を大きく上回る企業です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:46.8%
- 有利子負債倍率:0.11倍
中堅マリコン3社の自己資本比率の平均が55.5%、有利子負債倍率の平均は0.2倍です。
若築建設の自己資本比率は、中堅マリコン3社の平均を下回ります。
若築建設の有利子負債倍率は、中堅マリコン3社の平均を下回っています。
利益剰余金の安心できる目安は、総資産に対して30%以上です。
剰余金は毎年増えていますが、総資産に対して27.3%となっています。
若築建設の財務体質は、かなり健全な財務体質です.
しかし、中堅マリコン3社の中では少し見劣りします。
中期経営計画
若築建設は、21年度から23年度までの3年間で中期経営計画を策定しています。
経営数値目標
引用:若築建設
投資計画
引用:若築建設
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:120円(2024年3月期)
- 配当利回:3.26%(24年3月22日終値)
- 配当性向:33.2%
若築建設は、配当性向の目標を30%としています。
配当性向の目標や財務体質から見ても問題ありません。
株主優待
残念ながら若築建設は、株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
若築建設を買うなら、4000円から4400円の窓を埋めれるかに注目したい。
若築建設の主力事業である建設事業は売上の98.4%を占めています。
若築建設の建設事業比率は、バランスの取れた事業です。
建設事業の内訳を見ると建築比率は約28.5%、土木事業の比率は71.4%です。
その中で、海上比率が約35.7%、陸上比率が約35.6%になっています。
また国内の官民比率を見ると68.5%:31.5%になっています。
株価は、昨年来高値の4585円から大きく窓を開けて、4000円を割り込んで下落しました。
そこから約10か月間の調整期間を終えて上昇しています。
現在の株価は、約18年ぶりの高値圏まで上昇しています。
また月足と週足のチャートを見ると長期的には上昇傾向です。
若築建設の経営効率は、中堅マリコン3社の中でも平均を上回る経営効率です。
また財務体質は、中堅マリコン3社で比べると少し見劣りしますが財務体質は健全です。
高い浚渫技術を持つ若築建設ですが、近年は再生可能エネルギーの建設工事にも取り組んでいます。
特に洋上風力、大型バイオマス発電、太陽光、小水力発電の再生可能エネルギー事業に注目です。
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