奥村組(1833)の株価を分析していきます。
奥村組を5つのポイントで説明
- 免震技術とトンネル工事に強み
- バイオマス発電の再生可能エネルギーにも注力
- 売上は土木事業と建築事業のバランスが取れているが利益の主軸は土木事業
- 財務は健全だが余剰金と有利子負債倍率の今後に注意
- 週足、月足の移動平均線は全て上向きなので、長期目線で買いを検討したい
奥村組の概要
奥村組は、建築工事では免震技術、土木工事ではトンネル工事に強みを持つ中堅ゼネコンです。
中堅ゼネコンの中でも西の奥村組、東の前田建設工業と言われる中堅ゼネコンの中でも代表企業です。
奥村組は、建設業界の中で「免震技術のパイオニア」で有名です。
1980年代には、自社の設計施工で日本初の免震技術の活用したビルやマンションを施工しています。
そこから度重なる震災をきっかけにより優れた免震技術を開発しています。
また通天閣の工事を手掛けた事も有名で、プロジェクトXにも取り上げられました。
奥村組は、土木事業の売上高の内、国内官公庁が約63%を占めています。
奥村組は、熊谷組や前田建設工業と同じくトンネル工事に強みを持っています。
工事の種類別の売上の46%が道路や鉄道関係のトンネル工事となっています。
2018年に奥村組は、シンエネルギー開発が北海道で開発を進めている「石狩バイオマス発電事業」に参画しています。
再生可能エネルギー事業への参入
奥村組は、シンエネルギー開発と北海道の石狩湾新港地域の「木質バイオマス発電事業」に参加しています。
燃料は輸入バイオマス燃料である木質ペレットとヤシ殻を使用する予定です。
バイオマス専焼発電所の想定年間発電量は約3.6億kWh。
22年10月にこの発電所の運転開始を目指しています。
これは一般家庭約12.1万世帯分の年間使用電力量に相当する電力になっています。
発電した電力は、全量を北海道電力に売電する予定です。
免震技術
引用:奥村組
1986年に日本初の実用免震ビルの奥村組技術研究所を建設しています。
免震性能の把握を目的に「建物そのものを人工的に揺らすことができる」設備を備えています。
設立当時から免震技術の実証施設として、免震構造に関する様々なデータを蓄積しています。
また30年以上たった今でも十分な安全性を確保しているのも、免震技術の高さが分かります。
フレキシブル免震システムを開発
引用:奥村組
免震展示ケースを開発
阪神淡路大震災をきっかけに展示博物館の免震展示ケースを開発しました。
奥村組の独自のコサインレールシステムが使われています。
ローラーが動く事で揺れの周期が変わり、地震の周期との共振を回避できます。
長周期地震動にも対応できる高性能な免震システムです。
リ・バースコンクリード
引用:奥村組
奥村組は、再生資源化技術の一つにリ・バースコンクリート技術を持っています。
このリ・バースコンクリートとは、解体コンクリートを100%使用した現場再生コンクリートの事です。
事業セグメント
奥村組は、主に3つのセグメントから成り立っています。
- 土木事業:土木工事全般に関する事業
- 建築事業:建築工事全般に関する事業
- 投資開発事業:不動産の販売及び賃貸に関する事業、再生可能エネルギー事業等
- その他事業:建設資機材等の製造及び販売に関する事業等
奥村組の売上構成比率(2021年3月)
奥村組の売上高は土木工事、建築事業のどちらにもバランスが取れています。
奥村組の利益構成比率(2021年3月)
利益の主軸は土木事業になり、全体の約72%を占めています。
21年3月期の土木事業の利益率は約8%、建築事業の利益率は約0.9%になっています。
建築事業の利益率が1%以下なので、他の上場ゼネコンと比べても著しく低いです。
しかし、不動産販売や再生エネルギー分野の投資開発事業が、大きく利益率をカバーしています。
株価の推移
月足10年チャート
引用:株探
週足5年チャート
引用:株探
株価指標
- PER:12.0倍
- PBR:0.66倍
建設業の平均PERが9.8倍、PBRが0.9倍な事を考えるとやや割高と判断されています。
チャート分析
月足10年チャートを見ると、現在の株価は2500円の節目から反発しています。
現在6MAは24MAをゴールデンクロスしています。
12MAも上向きでゴールデンクロスしようとしています。
週足5年チャートを見ると3300円付近が節目の抵抗線を作っている事が分かります。
13MA、26MA、52MAは上向きで、26MAにサポートされながら上昇中です。
業績と収益性の推移
売上高と営業利益
引用:株探
売上高の過去最高は1992年に3614億円、営業利益の過去最高も1996年の240億円です。
過去最高の最終益とEPSを出した18年から2年間下落しましたが、21年には回復しています。
しかし22年3月期は、増収減益予想になっています。
経営効率
引用:株探
- 営業利益率:4.46%
- ROE:5.44%
- ROA:2.80%
- EPS:243.2円
中堅ゼネコン8社の平均営業利益率は4.9%なので、ほぼ平均的な利益率です。
上場企業の平均ROE8%、ROA3%なので、平均を少し下回る経営効率の企業です。
財務状況
引用:株探
- 自己資本比率:51.4%
- 有利子負債倍率:0.18倍
100億円以上の建設業の自己資本比率の平均が44%なので、優良な自己資本比率です。
直近3年の有利子倍率は増加傾向ですが、1倍以下の0.18倍なので健全な財務状況です。
余剰金は減少傾向になっていますが、総資産に対して29%あります。
営業CFは、21年3月期に大幅に改善されていて、投資CFは前年と比べると安定しています。
財務CFは増加傾向で、余剰金が減少傾向にあるので本業が厳しい状態である事が分かります。
中期経営計画
奥村組は、2030年に向けたビジョンの実現に向けて中期経営計画を策定しています。
現在の中期経営計画は、2018年から2021年度までです。
2021年からの次期中期経営計画の発表と内容に注目です。
経営数値目標
引用:奥村組
21年3月までの中期経営計画では、売上高、営業利益、経常利益、ROEの向上を掲げています。
21年度の売上高目標2500億に対して、21年3月期の売上高2200億円と目標未達です。
3年間の推移では、ほぼ横ばいです。
営業利益は128億、経常利益は147億、ROE6.32%で目標未達。
どれも3年間で減少傾向にあります。
投資計画
引用:奥村組
中期経営計画(2019~2021年度)では3年間で400億円規模の投資を計画していました。
資本政策
引用:奥村組
配当金の推移と株主優待
配当金の推移
引用:バフェットコード
- 配当金:125円(2022年3月期)
- 配当利回:4.27%(21年6月26日終値)
- 配当性向:51.3%
配当は、4年連続減配をしています。
21年までの総還元性向50%以上、配当性向30%以上としていました。
22年3月期予想のEPSは243.2円と、21年3月期に比べて28.7円の減少です。
総還元性向50%以上を考えると、配当だけで51.3%になるので、自社株買いの期待は出来ません。
株主優待
残念ながら奥村組は、株主優待の設定がありませんでした。
まとめ
奥村組を買うなら、現在の株価2900円付近で買いを検討したい。
配当利回りが4%以上で財務状況も健全ですが、4年連続減配しています。
また業績自体は大きく回復したわけではないので、好調とは言えません。
財務状況も優良ですが、余剰金や有利子負債の推移が気になります。
チャートを見ると株価が2~3年下落した銘柄は、その後に反発する事が多いです。
実際に奥村組の株価も2018年から下落しましたが、20年3月から反発しています。
週足、月足の移動平均線は全て上向きです。
直近の調整では、2800円付近でサポートされているのも分かります。
次の目標は、3200円から3300円を目指して上昇を期待したいです。
そこからまたさらに上に抜けると面白いかもしれません。
こちらもCHECK
住友不動産(8830)の株価分析と特徴【7年以内に配当金の倍増を宣言】
住友不動産(8830)の株価分析と特徴をまとめていきます。 住友不動産を5つのポイントで説明 売上と利益の主力はオフィスビルを中心とした不動産賃貸事業 当期純利益は10期連続最高益を更新 ...
続きを見る